日経サイエンス  1996年1月号

木星に到達した「ガリレオ」

T.V.ジョンソン(ジェット推進研究所)

 12月7日,探査機ガリレオが約6年間の旅を終えて,最終目的地である木星に到達した。そして,プローブと呼ぶ観測装置を木星に落下させ,とくに大気に関する詳細なデータを収集した。このあと,ガリレオ本体は木星周回軌道に入り,木星はもちろん,その衛星であるイオやガニメデなどを詳しく観測していく。

 この論文は,ガリレオ計画の代表を務める著者が,木星到着の直前に執筆したものである。ガリレオ計画のこれまでの歩み,木星到着までに得られたさまざまな発見,相次ぐトラブルとそれを克服してきた関係者の苦闘,今後の期待などを生き生きと語っている。

 

 これまでガリレオは,いわば副産物として多くの成果をあげてきた。たとえば小惑星ガスプラの観測は,初めて小惑星を間近に観測したもので,磁場が存在するらしいことを確認した。さらに小惑星イーダでは,この直径約56kmの小天体が,さらに小さな衛星をもつことを発見した。

 

 主アンテナが開かないために大容量の交信ができなくなったこと,さらにはデータ記録用のテープレコーダーの故障など,ガリレオ計画はさまざまなトラブルに見舞われたが,大半は技術的に克服した。今後,太陽系最大の惑星とその月たちに関して,予想もしなかった世界を見せてくれるはずである。

著者

Torrence V. Johnson

ガリレオ科学探査グループの代表。カリフォルニア工科大学で惑星科学で博士号を取得し,マサチューセッツ工科大学惑星天文学研究室に加わった。現在,カリフォルニア州パサデナのジェット推進研究所の上級科学者として,ボイジャー計画を含む多くの太陽系プロジェクトを支援してる。

原題名

The Galileo Mission(SCIENTIFIC AMERICAN December 1995)

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