日経サイエンス 2009年6月号

量子もつれが相対論を脅かす

2009年4月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

物理学をきわめると,哲学的な問題にあたるというのが,よくわかるのが,今月号の表紙になった記事。例えば岩を動かすには,その岩に触るか,岩に触れている棒に触るか,あるいはその棒を持っている人の耳に空気中を振動して伝わる音によって指令を送るか,いずれにせよ,直接に隣り合っている物を介して,ものごとを進めていくほかありません。これを「局所性」と呼んでいます。ラジオから放送局での会話が流れてくるのも,電波が空気中を伝わってきていますから,局所性は保たれています。 ですが,こうした直感的な因果関係を壊してしまいそうなのが「量子もつれ」。今月号のトップ記事では,この難題に迫ります。 もう少し,日常的なお話ならば,脳の細胞の話題などがおすすめ。高齢になってからでも,脳のニューロンが新しく作られていることは20世紀末の大きなトピックスでした。ただ,残念なことにせっかく新しいニューロンが生まれても,ほとんどは何もできないまま死んでしまいます。新生ニューロンを生かすにはどうすればよいのか? 日経サイエンスを毎号読むことは,たぶん,とっても役に立つはず! 期せずしてタイムリーな話題になったのは「新局面を迎えた結核との戦い」。大阪の助産師や人気お笑い芸人が結核を発病してニュースになっています。結核は過去の病気ではありません。それどころか,厄介な耐性菌も登場しています。新たな開発技術を応用した新薬やワクチンが待ち望まれています。 驚きの話題は,「ナノチューブ1本でラジオ!」 これ,タイトル通りの内容です。ウェブから実際に音が聞けます。ぜひ聞いてみてください。

物理学

量子もつれが相対論を脅かす  D. Z. アルバート/R. ガルチェン

 

神経科学

鍛えるほど頭はよくなる 新生ニューロンを生かすには  T. J. ショア

 

ナノテクノロジー

ナノチューブ1本でラジオ!  E. レジス

 

医学

新局面を迎えた結核との戦い  C. E. バリー/M. S. チャン

 

地球工学

温暖化の究極の解決策!? 地球に日よけ  R. クンジグ

 

エネルギー

一目でわかる再生可能エネルギー  M. L. ウォルド

 

国際安全保障

核実験を監視する  P. G. リチャーズ/W.-Y. キム

 

サイエンス・イン・ピクチャー

すばるが見た渦巻銀河M33 銀河考古学の扉を開く  中島林彦/協力:有本信雄

 

 

ダイジェスト

 

サイエンス考古学

 自己複製/宇宙でのお食事/求む,脚本家/空高く/カタツムリの法律/安全設計とはいえ

UPDATES

 コロンビア号の最期/おいしい感覚/回るナノスイマー/規制撤廃

NEWS SCAN

試験管内の進化/粒子探しに新発想/超特大の大蛇/手を挙げろ/北の森に迷惑な侵入者/群集の狂気を鎮める方法/草原の動物にペスト/抗騒音タンパク質絞り込み無効音波加熱で遺伝子オンフンコロガシの献立変更解けたカルシウムの謎北極海を禁漁におっと危ない!  ほか

いまどき科学世評

 核をめぐる新構図を読む  塩谷喜雄

茂木健一郎と愉しむ科学のクオリア

 人間に近づく音声認識  峯松信明(東京大学)

パズルの国のアリス

 死刑囚の生き残り戦略  坂井 公

個性派 ミュージアム巡礼

 ケンブリッジ大学ウィップル科学歴史博物館  文・写真:キュラトゥス

ブックレビュー

 『多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者』  瀬山士郞

 『言葉は身振りから進化した』  柳原大

 <連載> 森山和道の読書日記 ほか

TREND

 ヒトと同じように立ち,ヒトの思念に従う

ANTI GRAVITY

 不毛のポルノ論争  S. マースキー

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次号予告

今月の科学英語