特集:大選択 地球の未来 2050年をどう切り開くか
現代は人類史上類を見ない時代だ。人口が増え,人類はより豊かになり,そして地球という惑星の環境を大きく変えるまでになった。今後数十年間にどう事を運ぶかによって,地球とともに生き続けられるか,破綻を来すかが決まる。未来への処方箋を探った。
プロローグ
ボトルネックを超えて G. マッサー
人口,経済,そして環境。3つの大きな歴史的トレンドが現代を特徴づけている。世界が抱えるさまざまな問題の前にただ立ち尽くすのではなく,それらに対処するには,これら3つのトレンドをまず理解する必要がある。
対談
日本が歩むべき道 京都議定書からの出発 西岡秀三×大塚啓二郎
今年2月,地球温暖化ガスの排出削減目標を定めた京都議定書が発効した。他にも貧困やエネルギー,病気など,世界はさまざまな問題を抱えている。こうした地球規模の問題を解決するために,日本は何ができるだろうか。
人口
90億人が住む世界 激変する人口バランス J. E. コーエン
伸び率は鈍化しているものの,50年後の世界人口は90億人以上に膨らむ。また,高齢化や都市部への集中など,そのバランスは過去とは大きく変わってくる。教育や技術開発,社会制度構築への投資を増やすことが重要だ。
貧困
極度の貧困をなくすには J. D. サックス
市場経済と経済のグローバル化が進んだおかげで,世界の多くの人々は極度の貧困から脱出できた。だが現在の最貧困層を助けるには特別の努力が必要だ
農業と水資源
小さな農地の大きな可能性 P. ポラック
緑の革命は食糧の増産にはつながったが,貧困の撲滅には成果を上げていない。安価な灌漑システムを活用して農地の生産性を高めれば,ごく狭い農地しか持たない途上国の農民でも貧困から抜け出すことが可能だ。
生物多様性
絶滅のホットスポットを救え S. L. ピム/C. ジェンキンズ
生物種はどのように絶滅していくのか,絶滅危惧種の共通点は何か。こうした研究から生物多様性を守るための新たな手法が浮かび上がってきた。非常に喜ばしいことに,大した費用のかからない方策だ。
エネルギー
豊かな「脱炭素社会」へ A. B. ロビンス
エネルギー利用効率の向上に的を絞り,再生可能エネルギーの導入を進めれば,化石燃料の消費を大幅に削減して気候変動を食い止めることができる。しかも,エネルギーの節約によってもたらされる利益は膨大だ。
公衆衛生
病気との闘い 求められる新戦略 B. R. ブルーム
かつては先進国特有の病気だった心臓病や糖尿病が世界中に広がりつつある。一方,感染症の脅威も依然,不気味な影を落としている。世界の人々が健康格差のない生活を送るには,いま何を優先すべきか。
経済学
環境経済学の挑戦 H. E. デイリー
世界経済は今日きわめて巨大な規模となっている。無限に広がる生態系で活動しているかのようなふるまいはこれ以上続けられない。限りある生物圏内で持続可能な経済を実現するには,新たな考え方が必要だ。
政策
優先順位をどうつけるか? W. W. ギブズ
世界は多数の問題を抱えているが,解決策にも事欠かない。次に取り組むべきものはどれなのか?その答えは,新たな市場メカニズムが示してくれるのかもしれない。
世界の研究室から
環境人類学で知る中国の現在 卯田宗平(中国・中央民族大学民族学社会学学院)
サイエンス考古学
宇宙を飛ぶ金属の鳥/治療の弊害/北西航路の初航行/初期のヘリコプター/内燃機関/迷案?
TOPICS
2005年のノーベル賞決まる/系外惑星の軌道に肉薄/極限環境で生まれる星/惑星探査機が謎の減速/量子計算に新たな壁?/解読された寄生虫ゲノム/ふわふわの彗星/MgB2超電導体で初の永久電流/「はやぶさ」,本番目前でピンチ/次のカトリーナへの備え/筋肉スーツで楽々作業/「はいはい」する恐竜 ほか
パズリング・アドベンチャー
確率のパラドックス デニス・シャシャ
いまどき科学世評
秘薬願望とキノコ 塩谷喜雄
素顔の科学者たち
ブレーンの美をとらえる リサ・ランドール
旅して発見!
東京湾の原風景を残す盤洲干潟 文:中村いづみ 写真:アーススピリット
WAVE
動き出した海辺の環境教育/地球温暖化で海が変わる/追加と訂正
ブックレビュー特集
量子科学を読む 平野琢也
フィールドワークを読む 平松和彦
都市の建築と歴史を読む 鈴木博之
<連載>森山和道の読書日記 ほか