日経サイエンス 2005年11月号

宇宙の調べは狂っている? 背景放射の奇妙なズレ

2005年9月24日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

表紙イラストの弦の切れたチェロが暗示するのは宇宙背景放射の観測データと理論値との奇妙なズレを暗示したもの。オーケストラにたとえると,チェロのような“低音部”が理論値にあわないのです。もしかして,現在の宇宙論が間違えているのかも・・・。
2つ目の記事は,幼い子どもの「シンボル」の理解について。子どもならではのかわいい勘違いに,読んでいて思わず微笑んでしまいました。
ほかには胸部大動脈瘤,歯の再生,質量の起源などなど。

 

宇宙論

宇宙の調べは狂っている? 背景放射の奇妙なズレ  G. D. シュタルクマン/D. J. シュワルツ

初期宇宙の姿を今に伝えるマイクロ波背景放射。その解析データに理論と矛盾する点が見つかった。周波数の低い“低音”成分が弱く,ピッチも狂っているのだ。理論に誤りがあるのだろうか?

 

発達心理学

子どもは象徴をどう理解するのか  J. S. デローチ

文字や絵など,象徴的な表現は人間の文化で決定的な役割を果たしている。だが赤ちゃんは象徴表現をまだ理解できないので,数年かけて学習していく過程で思いもよらない間違いをすることも多い。

 

再生医療

現実味を帯びる歯の再生  P. T. シャープ/C. S. ヤング

抜け落ちた歯の代わりに患者の細胞を使って新たな歯を再生させる研究が活発になってきた。歯は小さいながらも「臓器」だが,そう遠くない将来,他の臓器に先駆けて,歯の再生医療が可能になるはずだ。

 

情報技術

モーフウエア 変幻自在なプロセッサー  R. コッホ

さまざまな命令を実行できる柔軟性と高速処理を兼ね備えた新しいプロセッサーが登場しようとしている。瞬時に音楽プレーヤーに変身する携帯電話が登場するのも夢ではない。

 

古生物学

動物はいつ左右対称になったのか  D. J. ボッティエ

私たちのように左右対称な体を持った動物は,先カンブリア時代にすでに出現していたらしい。その証拠となる小さな化石が中国で見つかった。動物の進化の歴史に新たな1ページが刻まれた。

 

物理学

質量の起源に迫る  G. ケイン

物質にはなぜ質量が生じるのだろうか?宇宙を満たす「ヒッグス場」の存在を確認できれば,この根本的な謎がついに解決する。

 

物理学

胸部大動脈瘤 破裂の危機を避けるには  J. A. エレフテリアデス

自覚症状なしに突然死を引き起こす大動脈瘤は時限爆弾のようなものだ。多数の症例をもとに適切な治療時期を探る研究が進んでいる。

 

半導体技術

水滴で描く超微細回路 期待高まる液浸リソグラフィー  G. スティックス

半導体チップ微細化のカギは意外なところに潜んでいた。水を利用する単純なアイデアだ。既存の光源を使いつつ,解像度を上げる。

 

 

 

世界の研究室から

 錯体研究に尽きせぬ興味  大久保貴志(ノースウエスタン大学)

サイエンス考古学

 沈み込み説/風力発電/カリブの先住人/過大評価だと過小評価された魚雷/黄熱病/タルボットの写真

TOPICS

地底めざし「ちきゅう」出航へ/ゲノムの大半に機能あり/幹細胞を育てるチップ/ADHDの適切な治療法は/CO2を吸収する細菌マシン/オスとメス,その深い溝/生き物を守る回廊/秘密のおしゃべり/衛星どうしを光でつなぐ/「すざく」,懸命の観測開始/タイムマシン実現に前進?/実験室で育てる食肉/まだまだ尽きぬ惑星発見のタネ/笑顔の効果 ほか

旅して発見!

 スペースシャトル飛行を支える舞台裏  文・写真:林公代

いまどき科学世評

 諫早裁定に科学の不見識  塩谷喜雄

素顔の科学者たち

 オスゲノムの地図を解読  デービッド・ページ

パズリング・アドベンチャー

 古代エジプト4000年の謎  デニス・シャシャ

現代からくり拝見

 ラピッドプロトタイピング

WAVE

 わかり始めた台風の実/いつまでも飽きない衛星ラジオ/独立記念にまつわる証明

ブックレビュー

 『ジーニアス・ファクトリー』

 『ホーキング 虚時間の宇宙』

 <連載>森山和道の読書日記 ほか

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