日経サイエンス 2005年4月号

実用段階に入った量子暗号

2005年2月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

ハイゼンベルグの不確定原理から,理論的に破ることのできない量子暗号がいよいよ実用段階に入ってきました。今月号では,その原理だけでなく,非凡なアイデアを生み出した研究者たちも紹介します。
2つめのおすすめは,人類学会を騒然とさせている原人の話題。わずか1万3000年前のインドネシアにいた彼らは,身長1メートルほど。脳も猿人並みです。ですが,精巧な石器をつくって象を狩り,火で調理していたと思われるのです!
ほかには,自然免疫,有能な秘書のように場の雰囲気を読めるコンピューター,自尊心を高める教育の成果などなど。久々のサイエンス・イン・ピクチャーは,光学顕微鏡で見た美しい微細世界です。

 

情報技術               

実用段階に入った量子暗号  G. スティックス

盗聴が原理的に不可能な「量子暗号」の初の製品が登場した。量子力学の不思議な現象を直接に利用した初の実用技術だ。

 

情報技術

究極の暗号はいかにして生まれたか  古田彩

量子暗号が発明される前,その源流となったアイデアを生み出した研究者がいた。知られざるパイオニアたちの発想に迫る。

 

古人類学

人類進化の定説を覆す 小さな原人の発見  K. ウォン

インドネシアで史上最小の原人が発見された。わずか1万3000年前まで私たちの祖先と共存していたらしい。

 

生命科学

もうひとつの防御システム 自然免疫の底力  L. A. J. オニール

昆虫や植物にはT細胞やB細胞はなく,自然免疫という仕組みが身体を守っている。ヒトでは大した役割を果たしていないとされてきたが,実際にはあらゆる免疫反応の基本であることがわかってきた。

 

コンピューター

気配りできるコンピューター  W. W. ギブズ

電話やメールは便利だが,一方でしょっちゅう仕事や生活の邪魔をされるようにもなった。人間の都合や忙しさを考慮してくれる“賢い”コンピューターが開発されている。

 

サイエンス・イン・ピクチャー

美は細部に宿る 光学顕微鏡で見る世界  E. ハリソン

この世界には尽きせぬ美がある。ニコンが主催する顕微鏡写真コンテスト「スモールワールド」から優秀作を紹介。

 

天体物理学

まだまだ元気な宇宙  A. J. バーガー

宇宙が若かったころには爆発的に星が生まれ,巨大ブラックホールやクェーサーが勢力を振るった。最近はその勢いが失われたかに見えるが,実はどうなのだろうか?

 

心理学

前向き思考で成功できるか  R. F. バウマイスター/J. D. キャンベル/J. I. クルーガー/K. D. ボース

米国では自尊心の向上が青少年の非行防止などに役立つと考えられてきた。だが自尊心を高めるだけでは何の解決にもならないようだ。

 

 

 

世界の研究室から

 古典に広がる宇宙  大草輝政(ケンブリッジ大学古典学部客員研究員)

サイエンス考古学

ウイルスの自己修復/ポリオワクチン/異文化理解の手がかり/ラムゼーの功績/米国人に虫歯が多いのは?/不足するグアノ

TOPICS

超大容量のDVD/復活した「宇宙ひも」/大地震が突き動かした地球/荒れ地に育つ作物を/乾いた大地にも生命が/惑星誕生の現場をキャッチ/深海映画に相乗りした科学/アマゾンがサバンナに変わる日/足踏みするポリオ撲滅/魚種までわかる魚群探知機/塩水吸入で伝染抑制 ほか

いまどき科学世評

 科学主導の環境の世紀を  塩谷喜雄

旅して発見!

 火山三原山とともに生きる伊豆大島  文・写真:西森有里

パズリング・アドベンチャー

 黄金のバランス  デニス・シャシャ

外来どうぶつミニ図鑑

 カイウサギ 小島で増殖する野良ウサギ  文・写真 鈴木欣司

素顔の科学者たち

 世界最小の古人類を分析  ピーター・ブラウン

WAVE

 自治体が促進 !? ネットの「オレオレ詐欺」/大繁盛!学会ウェブサイトQ&Aコーナー/はじめに注意書きあり

ブックレビュー

 『消滅する言語』

 『「進化」大全』

 <連載>森山和道の読書日記 ほか

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