日経サイエンス 2004年1月号

特集:ロボットから人間を読み解く

2003年11月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

1,429円+税

ご購入はお近くの書店または下記ネット書店をご利用ください。

編集部から一言

人間とはよくできているものだ──人間型ロボット(ヒューマノイド)の研究をしている方は皆さんそう思うようです。今月号の特集は「ロボットから人間を読み解く」。人に似せたロボットを作る試みは,人を知ろうとする試みなのです!
 人を知るための工学的アプローチがヒューマノイドだとすると,分子生物学的アプローチがヒトゲノム計画でした。そのゲノムから,ヒトがなぜ他の霊長類などと違うのかがわかるはずですが……。遺伝子の退化が「ヒトらしさ」を生み出している,という説を紹介します。
 その他,デルフォイの神託の秘密など,今月も盛りだくさん。特製カレンダー付です。

ロボティクス

特集:ロボットから人間を読み解く

なぜロボット研究者はヒューマノイドを研究するのか─。世の中に役立つロボットを開発するだけでなく,ロボットを通じて人間の身体や心,知能を探ろうと考えているからだ。

 

工学が明かす身体の巧妙さ  高西淳夫

 

機械はコツを身につけられるか  國吉康夫

 

“情”が作る真のコミュニケーション  菅野重樹/尾形哲也

 

ヒューマノイド進化のシナリオ  土井利忠

 

 

新連載 短期集中連載 ゲノムが語る進化の謎(1)

遺伝子の退化がヒトを生み出した  高畑尚之

ヒトとチンパンジーのゲノムを比べても,ほとんど差はない。ヒトだけが持つ遺伝子というのはなく,むしろある特定の遺伝子を失ったことが“ヒトらしさ”を生みだしている。

 

天文学

銀河衝突が生み出す若い球状星団  S. E. ゼフ/K. M. アシュマン

球状星団は銀河誕生と同じくらい古い天体と思われていたが,最近その常識が覆された。銀河同士の衝突で今も新しく生まれている。

 

医学

ガン治療にウイルスを活かす  D. M. ネテルベック/D. T. キュリエル

病気の原因となるウイルスだが,遺伝子工学の手法を使ってうまく改造すると,ガンを効果的に攻撃する武器になる。こうした「ウイルス療法」の効果を調べる臨床試験も始まった。

 

考古学

「デルフォイの神託」の秘密  J. R. ヘイル/J. Z. デ・ボーア/J. P. チャントン/H. A. スピラー

古代ギリシャ・デルフォイのアポロン神殿では,巫女が神聖な霊気を受けて神託を伝えると信じられてきた。一度は否定されたこの言い伝えの科学的根拠が,最近になって明らかになった。

 

科学史

初飛行から100年 ライト兄弟の栄光と悲劇  D. C. シュレノフ

人類初の動力飛行という偉業も,当時は秘密のベールに閉ざされていた。栄誉が確立したのはずっと後になってからだった。

 

 

 

世界の研究室から

 ドイツの大学改革  高木剛(ダルムシュタット工科大学助教授)

サイエンス考古学

 オルドバイ峡谷/線文字Bの解読/飛行機の時代/鳥と種/X線による正確な人体図/パラフィン蝋燭

TOPICS

太陽光帆船,近く打ち上げ/人が働くと気温変動が鈍る?/バクテリア電池に現実味/ねじれた光で宇宙を探る/湖のふたを開けて大丈夫?/競争相手を殺す植物/アルツハイマー病と炎症の関係に疑問/ウイルスたちの戦い/安価なチタンを目指して/過酸化水素で環境浄化/ブラックホール救命具 ほか

いまどき科学世評

 トップダウン研究の危うさ  塩谷喜雄

瀬名秀明の時空の旅

 量子が実現するテレポーテーション  ナビゲーター:古澤明

パズリング・アドベンチャー

 紛争抑止の戦略を立てる  デニス・シャシャ

素顔の科学者たち

 運び屋を追いかけろ!  杉山雄一

旅して発見!

 冬支度をするヨセミテ国立公園のナキウサギ  文・写真 金澤智

WAVE

 研究評価は国の意向次第?/迷惑メールの根源を断てるか/ソフト購入者の権利を守れ/遠すぎた橋

ブックレビュー

 『とらわれの脳』

 『ノアの洪水』

 <連載>森山和道の読書日記 ほか

掲示板

セミコロン

次号予告