特集:脳力増強の科学
プロローグ
究極の自己改善を目指して G. スティックス
脳は依然として大きな謎だ。精神機能を向上するという夢への挑戦が続く。
ニューロン新生
再生する力を引き出せ F. H. ゲージ
大人の脳でも新しいニューロンはつくられている。病気やけがで脳が傷ついたときに,ニューロン新生を促してやれば,治癒も可能になるだろう。それだけではなく,健康な脳のはたらきをますます高めることさえ可能になってくる。
神経薬理
頭の良くなる薬をつくる S. S. ホール
痴呆や認知機能障害,睡眠障害などの治療用に開発された薬に,記憶増強薬としての期待が集まっている。安全で効果の高い夢のスマートドラッグは実現可能なのだろうか。開発に当たる研究者たちの話を聞く。
活性化
脳を電磁刺激する M. S. ジョージ
脳の回路をパルス状の磁場で刺激するだけで,うつ病の症状を和らげたり認知機能を高めることができそうだ。スイッチ1つで疲労を回復させることも可能になるかもしれない。
脳機能計測
心を読む機械 P. ロス
脳を画像化するfMRI装置は究極の“読心術師”となるだろう。あやふやな思考をとらえ,あなたのウソを見破ってしまう,ちょっと不気味な機械が現実になるかもしれない。
イメージング
画像が明かす学習の仕組み 小泉英明
身体を傷つけずに脳を画像化する技術の登場で,人間の脳が活動する様子を観察できるようになった。そこから生まれた成果は介護や学習の進め方を一変させるだろう。
fMRIの開発者 小川誠二氏に聞く 編集部
可塑性
鍛えれば機能は高まる M. ハロウェイ
これまでの常識と違い,成人の脳も適切な刺激を与えればその配線を変える。脳梗塞の後遺症や読字障害の克服に実績を上げている。さまざまな精神障害の治療にも役立つと考える科学者もいる。
ストレス
不安とうつを克服する R. サポルスキー
ストレスは心のバランスを崩し,不安や抑うつを引き起こす。このとき脳で生じている変化の仕組みが明らかになれば,効果の高い薬が開発できるかもしれない。
診断技術
心の病を見きわめる S. E. ハイマン
心の病気は客観的な検査が難しい。だが遺伝子検査と脳画像診断の進歩によって,早期の診断と治療が可能になりつつある。
倫理
脳の改良は許されるか A. L. カプラン
脳の力を高める技術は新たな不公平を生みはしないだろうか? しかし,この問題の解決策は脳の改良を禁ずることではない。
付録:特製絵ハガキ
「浮き出る錯視」不思議な感覚にあなたを誘う 石毛宏明/高瀬修一
錯視図やだまし絵をステレオグラムで見たらどうなるか?立体視の世界へご案内!
特製絵ハガキ体験記 編集部
世界の研究室から
発生初期のプラチナルールを探る 三品裕司(米国立環境衛生科学研究所)
サイエンス考古学
電波望遠鏡/現代人の心/飛行機の誕生/汽船貿易/科学者のよき友
TOPICS
ホルモン補充療法は本当に危険か/MRIに生理学・医学賞/“バリアフリー”のナノチューブ/奇妙な量子気体を求めて西ナイル熱にワクチンの可能性/アメリカ人シベリア起源説に疑問/左巻きアミノ酸優位の秘密/ハイテクピアノで筋失調症を治療/正確な重力地図/H1.5Oの謎/農業を脅かすテロの影/「水爆の父」没す ほか
旅して発見!
ケープカナベラルでロケット打ち上げを待つ W. W. ギブス
素顔の科学者たち
劣化ウラン弾と戦う ペッカ・ハービスト
パズリング・アドベンチャー
遭難者を捜せ デニス・シャシャ
いまどき科学世評
無謬性のわな 塩谷喜雄
瀬名秀明の時空の旅
工学で探る知能とは何か ナビゲーター:中島秀之
WAVE
電波で地震予知は可能か?/あのビデオゲームを再び/個人の創意は大切だけど…/こんな名前に誰がした
ブックレビュー
『崩壊の予兆』
『ゼムクリップから技術の世界が見える』
<連載>森山和道の読書日記 ほか