日経サイエンス 2001年10月号

特集:生物に学ぶナノモーター

2001年8月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

表紙になっているのは「光を止める物理」。昨年,ついに光を止めることに成功したグループがあります。そんなことが可能なの? とにわかに信じがたいでしょうが本当です。
特集は「生物に学ぶナノモーター」。こちらも,にわかに信じられない世界かもしれません。分子の世界では,進むためではなく止まるためにエネルギーを使っているというのですから。それを巧みに使っているのが生き物の生体分子。理論と具体例の両方を紹介します。
夏向き(?)の話題を2つ。熱帯魚を生け捕りにするために,猛毒シアン化合物(青酸化合物)を使っているという話と,食人は人類に根ざしていたという話。背筋が冷えてきましたか?
ほかには,誤解されがちな「催眠現象」,なかなかバクテリアを根絶できない理由を解き明かした「細菌コロニー」,現在のスパコンの1000倍以上の性能を誇るハイパーコンピューターの話題があります。

特集:生物に学ぶナノモーター

 

カオスから生体分子モーターへ  R. D. アツミアン

ナノスケールの世界では,四方八方から分子が衝突する激しい嵐が常時吹いている。この嵐と爪車の機構を組み合わせればモーターを回せる。一見,熱力学の第二法則に反するようだが,生体分子はこの仕組みを利用しているらしい。

 

ブラウン運動を巧みに使う筋肉分子

柳田敏雄

分子1つ1つを捕まえ,その動きを直接観察できる技術を開発した。この1分子計測技術を使って,筋肉のミオシン分子を調べたところ,ミオシンは化学エネルギーだけでなく,ブラウン運動を利用して動いていることがわかった。

 

 

 

細菌コロニーの砦を攻略する  J. W. コスタートン/P. S. スチュアート

細菌はバイオフィルムと呼ばれる強固な壁を作って,コロニーを保護している。フィルム内部の細菌を死滅させるには,細菌同士の情報伝達を妨害する方法が有効だ。

 

カニバリズムの起源  T. D. ホワイト

カニバリズム(食人)を証明することは困難だったが,最近の自然人類学と考古学の成果から決定的な証拠が得られた。食人習慣は人類の歴史に深く根ざしたもののようだ。

 

光を止める物理学  L. V. ハウ

昨年末,光を減速させ,ついに静止させる技術が確立した。これは新しい光通信技術,卓上ブラックホール,量子コンピューターなどの応用に道を開くだろう。

 

催眠現象の神話と真実  M. R. ナッシュ

催眠は“やらせ”や思いこみではなく,明確な生理的反応を伴う現象だ。感覚や行動と意識の間に「分離」を生じさせるため,鎮痛などの治療に効果があると認められている。

 

ハイパーコンピューターをつくる  T. スターリング

超電導素子やメモリー技術を駆使し,スーパーコンピューターの1000倍も速く動く「ハイパーコンピューター」のアイデアが登場した。気候変動の解明などに応用できそうだ。

 

シアン漁法が破壊する海の生態系  S. シンプソン

シアン化合物で熱帯魚を生け捕りにする「シアン漁法」が東南アジアのサンゴ礁を破壊している。これを防ぐため環境にやさしい漁法を認証する仕組みづくりが動き出した。

 

 

 

世界の研究室から

 バカンスを楽しむ科学先進国  北浜邦夫(フランス国立科学研究所主任研究員)

サイエンス考古学

 投入産出経済学/モデル共同住宅/米国産の爬虫類/デイジー,デイジー/カヤック/大量生産

TOPICS

タンパク質の全体像を探れ/環境に優しい溶媒/無線ネット規格で勝ち残るのはどれか?/光を使った計算法/キーボードは無実/脳の平面図を作成/赤血球の粘着性を増すタンパク質/コンコルドが帰ってくる/背景放射にピーク発見/第3の巨大ブラックホールを確認/環境に素早く適応した巻貝/音を当てて液体を結晶化

地球 塩の旅

 岩塩の教会  文・写真 片平孝

錯視のデザイン学

 渦巻きを見る脳の数学的テクニック  北岡明佳

右の世界,左の世界

 上下より左右が難しい空間認知の不思議  黒田玲子×松井孝雄(新潟国際情報大学助教授)

パズリング・アドベンチャー

 赤を観て,青を想う  デニス・シャシャ

WAVE

 CIAが設立したベンチャーキャピタル/遺伝子特許の現在/触感を伝える新型マウス/アカデミー賞と長寿の法則

ブックレビュー

 『未来のたね』

 『脳のなかのワンダーランド』

 <連載>森山和道の読書日記ほか

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