知の21世紀へ
特集1:ヒトゲノム解読をめぐる競争 詫摩雅子(編集部)
ヒトの全遺伝情報が書かれた塩基配列をすべて解読しようというヒトゲノムの解読は,公的資金を使って,データはすべて無償公開する国際チームと米国のベンチャー企業の激しい競争となった。しかしこれは,競争の序幕にすぎない。ゲノムのどこに有用な遺伝子情報があり,その遺伝子は何の働きをするタンパク質の設計図なのか,そのタンパク質は医薬品開発につながるのか--。早くも次の競争が始まっている。
ビジネスが加速したゲノム解読 K. ブラウン
新薬開発のカギ握るバイオインフォマティクス K. ハワード
ゲノム解読後に広がる新分野プロテオミクス C. エゼル
ヒト以外でも進むゲノム解読研究 久保田啓介(編集部)
戦略に欠けた日本のヒトゲノム解読 宮田満
冷戦終結後,ライフル銃や手投げ弾などの小型武器が紛争国に流出し,地域紛争が激化する一因になっている。急増する小型武器は一般市民や子供を戦争の巻き添えにし,市民の心に深い傷を負わせている。様変わりする戦争を抑止するには,新たな軍備管理が必要になる。
小型武器の拡散が迫る軍備管理 J. ボートウェル/M. T. クレア
紛争がもたらす心の深い傷 R. F. モリカ
戦場に駆り出される子供たち N. G. ブースビー/C. M. クヌドセン
矮小銀河で爆発的に誕生する星 S. C. ベック
望遠鏡の高性能化に伴い,通常の銀河より小さい「矮小(わいしょう)銀河」が相次いで発見されている。矮小銀河同士が衝突すると,多数の恒星が爆発的に生まれることがわかってきた。宇宙誕生直後の遺物が矮小銀河に残っている可能性もある。
深海の地底に潜む生命を探す S. シンプソン
地球で最大の生物圏は海洋ではなく,その下にある地殻かもしれない。その証拠を得ようと2人の科学者が調査船でサンプルの採取に乗り出した。深さ2500mを超える海底の下の地殻からのサンプル採取では,思いもかけないトラブルが次々に発生する。
骨から探るアメリカ先住民の暮らし C. S. ラーセン
米国にはスペイン人宣教師が建てた16世紀の教会跡がいくつか残っている。そこに埋葬されていた先住民の骨を調べると,西洋人が来てから食事や暮らしぶりが劇的に変化し,健康状態がかなり悪化したことがわかった。
世界の研究室から
南海トラフに浮かぶ研究所にて 平朝彦(東京大学海洋研究所教授)
空 模様
露 文・平沼洋司/写真・武田康男
サイエンス考古学
科学の時代,1900 年~ 1950 年/写真製版術/クモから製糸/歯から身元判別/絵空事
TOPICS
傷痕を残さない包帯が登場/シリコン製の遺伝子チップ/老化防止薬はできる?/ネットで小天体探査計画作りに参加/汚染された越境ルート/クローン動物の寿命/微修正迫られるビッグバン理論/ハチの雌に変身して雄をだます寄生虫/ポストゲノムの有力研究手法,故田中教授が予想/米国防総省の新無線システム/猛威を振るう土石流を予知/シリコン製の遺伝子センサー
夢に賭ける
ゲノム機能解明から画期的新薬を 増保安彦(ヘリックス研究所所長)
WAVE
ハッカーの教えるネット防護策/太陽の活動極大期で,地磁気の嵐も荒れ模様/アルコール,タバコ,大豆,大量摂取に注意
錯覚の情報学
目と耳と手,知覚の時差を脳が修正 柏野牧夫・西田眞也
最終回 脳の見方,モノの見方 41
人と人とのかかわりで進化する脳 養老孟司×岩田誠(東京女子医科大学付属脳神経センター主任教授)
数学レクリエーション
消え去ったパラドックス I. スチュアート
ブックレビュー
『みなしごゴリラの学校』 山極寿一
『科学者伝記小事典』 笠耐
<連載>森山和道の読書日記ほか