日経サイエンス 2000年8月号

混雑の心理学 密集は暴力を駆り立てるか

2000年6月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

ご購入はお近くの書店または下記ネット書店をご利用ください。

編集部から一言

特集は,ハードディスクの容量限界の話。ソフトや画像データ,音楽データなど,パソコン内蔵ハードに次々とため込んでいませんか? 著しい大容量化を見せるハードですが,技術的限界はすぐそこです。
今月の1本目は,混雑の心理学。密集状態になると凶暴になる動物もいますが,われわれ霊長類はどうなのでしょう?
次の論文では小惑星の多彩な顔ぶれを紹介します。ピラミッドの記事はポーランド版からの翻訳です。美しい写真をお楽しみください。金属水素の記事に付随して久保田が書いている話は「金属炭素」。驚くこと請け合いです。

混雑の心理学 密集は暴力を駆り立てるか  F. B. M. ドゥ・ヴァール/F. アウレリ/P. G. ジャッジ

1960年代のネズミの実験から,過密状態は暴力行動を引き起こすと信じられてきた。しかし,人間やチンパンジー,アカゲサルなどにはこの説は当てはまらない。霊長類は混雑するとどんな行動を見せるのか--。

 

解き明かされる小惑星の世界  E. アスファウ

相次ぐ探査機の打ち上げで,これまで謎に包まれていた小惑星の素顔が明らかになってきた。小惑星の正体は“がれきの集まり”らしいが,それはどうやってできてきたのか。

 

小惑星の地球衝突に備える  磯部琇三

直径500m以上の小惑星が地球に衝突すると大災害になる。衝突の確率はどの程度で,どんな回避策があるのか。衝突を避ける動きが実際に具体化してきた。

 

最古のピラミッドに隠されていたもう1つの墓  K. ミシュリヴィエッツ

エジプトのサッカラには紀元前3000年の最古のピラミッドがある。ポーランドの考古学チームは,その西側で鮮やかな壁画で飾られた謎の墓を発見した。

 

水素の金属を作る  W. J. ネリス

水素は通常は気体だが,米国の研究チームが140万気圧という超高圧をかけて金属の水素をつくり出した。金属水素を常温・常圧下で取り出せれば,画期的な新素材になる。

 

軽い元素で“究極の金属”を作る  久保田啓介(編集部)

 

 

エイズに追い詰められるアフリカ  C. エゼル

アフリカはいまエイズの流行に苦しんでいる。医師たちは,これ以上の感染の広がりを食い止めるため苦闘しているが,貧困や男尊女卑的な社会慣習の壁に阻まれている。その様子をジンバブエに探る。

 

知の21世紀へ

パソコン大容量化 迫り来る限界  J. W. トイゴ

コンピューターのハードディスクは超常磁性効果とよばれる現象が壁になって,記録密度の限界が近づいている。この壁を打ち破ろうと,IBM,シーゲート・テクノロジー,クアンタムなど世界のメーカーが新方式開発にしのぎを削っている。

浮上する新方式

磁気に光を加味/超常磁性効果の起きにくい材料を使う/ビットのパターン化/地平の彼方にあるホログラム記憶装置/10年後の実現目指す原子レベルの記憶装置/未来の「パンチカード」

 

 

 

世界の研究室から

 脳と意識の謎は解けるか  近藤秀樹(ワシントン大学医学部研究員)

サイエンス考古学

世界の食糧問題/超音波誘導/憂鬱な月曜日/ツェッペリン飛行船/舞台効果/ばい菌だらけの服/人気沸騰の氷/大火事とつむじ風

TOPICS

カーボンナノチューブの応用活発に/アルツハイマー病治療に有望視される抗炎症剤/ヒトゲノム解読後にらみ遺伝子データベースづくり/目には目を/エンジンの推力調節だけで航空機を操縦/手つかずの隕石/ナチスの核開発めぐり物理学者師弟が見せた確執/サメの軟骨でガン予防は疑問/低線量の放射線は体に必要?/百武彗星の長い尾/世界に広がる喘息

空 模様

 雷  文・平沼洋司/写真・武田康男

夢に賭ける 

 鉄の未知の性質に新たな視点で迫る  奥村直樹(新日本製鉄鉄鋼研究所所長)

錯覚の情報学

 知覚系が頻繁に見せる“前後不覚”  柏野牧夫・西田眞也

脳の見方,モノの見方 40

 「つながり」から考える環境問題  養老孟司×阿部治(埼玉大学教育学部助教授)

WAVE

 個人の好みを的確に予測するソフトが登場/監視社会の皮肉込め,オーウェル賞の授賞式/偉大な足技

数学レクリエーション

 タイルアートの新デザイン術  I. スチュアート

ブックレビュー

 『ハエ,マウス,ヒト 一生物学者による未来への証言』  丸山工作

 『知の創発 ロボットは知恵を獲得できるか』  栗本英和

 <連載>森山和道の読書日記  ほか

掲示板

セミコロン

次号予告