日経サイエンス 2000年6月号

生物時計を動かす遺伝子

2000年4月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

今月号の特集は,火星への有人探査計画。かつては海があった火星には,もしかすると生命の痕跡があるかもしれません。見て,判断して,サンプルをとるかどうか決める――人間には簡単ですが,ロボットにはできません。
もっとSFっぽい話もあります。「量子テレポーテション」です。量子なら,瞬間移動も可能です。
身近な話題がお好みでしたら,生物時計の話がおすすめ。眠りの周期だけでなく,さまざまなホルモン濃度など,体内には24時間周期の時計があります。
新薬の臨床試験がらみのニュースはたびたび耳にしますが,そもそも臨床試験ってどんなことをどういう風にするのでしょう? 臨床試験の紹介と,日本での現状をお伝えします。

生物時計を動かす遺伝子  M. W .ヤング

ショウジョウバエから人間まで,あらゆる生物の体内には,日周リズムを支配する時計が備わっている。この時計の歯車として働くのは,脳の細胞で活性化される複数の遺伝子とタンパク質だ。

 

量子テレポーテーション  A. ザイリンガー

光の粒子(光子)がもつ情報を遠く離れた場所に瞬時に伝送できることが,実験で裏付けられた。この仕組みは「量子テレポーテーション」と呼ばれ,SF小説でおなじみの“瞬間移動”も夢物語ではなくなってきた。

 

患者本位の臨床試験とは  J. A. ジビン

新薬が認可を受ける前に,安全性と有効性を立証するのが臨床試験だ。時間がかかる上に,臨床試験に参加した患者の中には,新薬候補ではなく偽薬を投与されることもあるが,現在の臨床試験の方法が最良なのだろうか。

 

転機迎える日本の臨床試験  詫摩雅子(編集部)

 

サイエンス・イン・ピクチャー

原色の花が誘う南米の森  G. マルティネリ

ブラジルの大西洋岸には,かつて広大な森林があった。現在は開発によって切れ切れになった森が点在している。その森は,色鮮やかな花を咲かせるブロメリア科植物の宝庫だ。

 

 

知の21世紀へ

特集 火星 有人探査のシナリオ

昨年米国は相次ぎ火星のロボット探査で失敗し,21世紀の火星探査の見直しを迫られている。立て直しを目指し「火星生命の探索」を目的とした有人探査のシナリオを検証,装備や飛行方法を具体的に紹介する。

 

生命探しのカギ握る有人計画  G. ゾーペット

 

着陸までの飛行プラン  G. マッサー/M. アルパート

 

ステップ1 安上がりな直行便  R. ズブリン

 

ステップ2 フォボス,ダイモスを中継地に  S. F. シンガー

 

ステップ3 巡回軌道の宇宙船を使う  J. オバーグ/B. オルドリン

 

ハリウッドが描く火星  P. ヤム

 

 

 

世界の研究室から

 パナマの小島は熱帯研究の最先端  酒井章子・スミソニアン熱帯研究所

サイエンス考古学

水素爆弾と民間防衛/畜産に役立つ抗生物質/突拍子もない新説/時計の調整/ベトナムと魚/綿紡績の職業訓練校/動力の伝達/バブルの世の中

TOPICS

ニューヨークを襲った新型脳炎/無重量での方向感覚喪失を回復/手書き風画像をCGで作り出す/仮想現実で離着陸機を効率よく管制/遺伝子組み換え作物に初の取引ルール/第五の味覚/ニワトリの羽毛から自動車部品/クォークの“火の玉”を再現/死者から結核感染/2つのものが同時に並ぶ

空 模様

 暈と雨  文・平沼洋司/写真・武田康男

夢に賭ける

 建物が自らトラブルを診断・修復  表佑太郎(大林組技術研究所所長)

錯覚の情報学

 「ちがい」と「ち」「が」「い」の際立った違い  柏野牧夫・西田眞也

脳の見方,モノの見方 38

 集落に見る不思議な形  養老孟司×藤井明(東京大学生産技術研究所教授)

WAVE

 暗号ソフト,輸出規制緩和後の課題/パソコンの空き時間をネットで買い上げ,商業利用/インチキ商売で失業者救済

数学レクリエーション

 部分集合取り尽くしゲーム  I. スチュアート

ブックレビュー

 『植物と動物の歳時記』  鹿野司

 『パストゥール 実験ノートと未公開の研究』  中村桂子

 <連載>森山和道の読書日記  ほか

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