妊娠初期に決まる自閉症 P. M. ロディエ
会話がうまくできないといった症状から,自閉症は大脳皮質などに障害があり,出生の前後に起きる何かが原因と考えられていた。ところが,脳の中でも最も古い部分である脳幹に異常が見つかった。この部位ができるのは妊娠20~24日後。脳幹の異常が,高次機能を司る部位にも影響を及ぼしているらしい。
木星探査機ガリレオが見た世界 T. V. ジョンソン
トラブル続きだったが,木星の大気にプローブを投下することに成功し,周回船はこの巨大なガスの惑星やその衛星のデータを送り続けてくれた。衛星はどれも想像以上に個性的で,木星系は科学者が考えていたよりもずっと複雑で多様な世界だった。
古びた風合いをCGで描く J. ドーシー/P. ハンラハン
コンピューター・グラフィックスで描く物体にさまざまな質感を与える試みが進んでいる。光の反射や汚れのしみ込み具合を精密にモデル化すれば,人の肌の微妙な色合いや緑青に覆われた仏像の姿をリアルに描くことができる。
超重元素の“離れ小島”を探す Y. Ts. オガネシアン/V. K. ウチョンコフ/K. J. ムーディ
自然界にある元素よりも原子番号の大きな超重元素は,つくりだせたとしても寿命が極めて短い。だが,そのなかに寿命が比較的長い元素もあるはずといわれてきた。理論に基づくその予想を確認する原子番号114の元素がようやく,見つかった。
生命のルーツはひとつなのか W. F. ドゥーリトル
ある遺伝子から全生物の系統図を描くと,太古の1つの細胞を根に持つ1本の樹の形になるとされていた。だが樹の根元では遺伝子は種の壁を超えてやりとりされており,最初の細胞の存在を疑問視する研究者もいる。
温暖化ガスを封じ込める H. ハーゾック/B. エリアソン/O. カルスタド
地球の温暖化防止では,石油などの化石燃料を燃やすと出てくる二酸化炭素(CO2)の排出抑制が議論されてきた。しかし,化石燃料の使用制限は難しいので,むしろ排出されるCO2を地中や海中に封じ込めることを目指す動きが一段と活発化している。
経済成長を持続させる地球温暖化対策は何か D. キース/E. パーソン
海の透明な生き物たち S. ジョンセン
体を透明にして見えなくすることで捕食者から身を守っている生き物たちがいる。透明に見えるようにするために,皮膚や内臓など体の外側にも内側にも,巧妙な工夫がされている。
知の21世紀へ
地球科学の新たな拠点 深海ステーション 中島林彦
沖縄南方の太平洋の底に,様々な観測装置を展開した深海ステーションが建設された。永遠に暗黒な無人の“荒野”にできたこの観測ステーションは,遠くの海底火山噴火やはるか頭上の津波を検知し,地球内部を見つめる目でもある。
世界の研究室から
実用目指したバイオセンサー研究 松本伯夫(カンザス大学薬学部化学科研究員)
サイエンス考古学
水素爆弾と民主主義/機械生命体/抗ヒスタミン薬はいんちき薬/市街電車のレール試験器/役に立つ技術/放射性崩壊/カリフォルニア・バブル/寄付金で見せ物小屋をひらく
TOPICS
生物兵器による攻撃を探知するセンサー開発/筋萎縮性側索硬化症のウイルス/動脈硬化の遺伝子医薬/身を縮めたのは生き残りのため/聴覚回復に新型の人工内耳/細菌で多様な汚染を浄化/大脳地図をめぐり議論百出/ブラックホールは観測できる/動作と言葉に深い関係/ネコが絶滅危惧種の代理母に/正念場の核融合研究/地平線に近い月が大きく見える理由/米医療関係者,ワクチンの不安解消に躍起/宇宙に多い?生命体分子/脳死後も手足は動く
空 模様
寒冷前線 文・平沼洋司/写真・海老沢次雄
夢に賭ける
次代のビジョンは基礎研究所から 岩野和生(日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所)
錯覚の情報学
せわしない目が取り違える動と静の世界 柏野牧夫・西田眞也
脳の見方,モノの見方 37
類人猿からヒトの進化を探る 養老孟司×山極寿一(京都大学大学院理学研究科助教授)
WAVE
オンライン入札が招いた化石の価格高騰/インターネットの利用者はどこまで広がるか/
コンピューターの猫による被害を防ぐには
数学レクリエーション
現実彫刻と仮想彫刻 I. スチュアート
ブックレビュー
脳と意識を読む 茂木健一郎
科学論を読む 金森修
科学に隣接するジャンルの本 ほか