突然眠りに襲われるナルコレプシー J. M. シーゲル
大笑いすると同時に脱力して床に倒れる,連日耐え難い眠気が襲い,大事な試験中にも寝てしまう──。日本人にはナルコレプシーの患者が多く,患者に共通する遺伝子から,自己免疫疾患の可能性が疑われている。
ワームホールと負のエネルギー L. H. フォード/T. A. ローマン
離れた場所をつなぐワームホールを造ったり,超光速の宇宙旅行を可能にするワープ推進装置を動かすには,「負のエネルギー」という異常な形態のエネルギーが必要だ。
知的生命体は永遠か L. M. クラウス/G. D. スタークマン
膨張宇宙のなかで,生命体が存続するには,減少していく資源と限りある知識で生き続けねばならない。著者らは,意識をもった意味のある形態としての生命は永久には存在できないと主張する。
氷表面の謎を解く J. S. ウェットラウファー/J. G. ダッシュ
氷の表面は,融点の0℃より低い温度でも凍っていない水の膜で覆われている。最近の研究で判明したこの性質によって,スケートの滑りやすさから雷雲の帯電現象まで氷にかかわる現象をきれいに説明できる。
氷に閉ざされた地球 P. F. ホフマン/D. P. シュラグ
8億~6億年前,想像を絶する気候の激変が地球を襲った。いったんできた氷河は太陽熱を反射し,地球は暴走冷却の悪循環に入る。そして,その後に必然的に起きる急激な温暖化。この激変は,カンブリア紀の生物爆発と呼ばれる生物の一斉進化をもたらした。
共存していた多様な化石人類 I. タッターソル
現在ヒト科の種には,私たち,つまりホモサピエンスしか残っていない。しかし,かつてはヒト科にもさまざまな種がいて,約180万年前のケニア北部では,少なくとも4種類の人類が共存していたようだ。
知の21世紀へ
特集:リニアモーターカーの行方
最終コーナーに入った日本の開発 澤田一夫
鉄道では未踏の相対速度時速1000kmを超える列車のすれ違い試験が成功した。日本のリニアモーターカーは技術的には,ほぼ実用化のメドがついた。
急浮上する米国の新方式 R. F. ポスト
米国で「インダクトラック」とよばれる磁気浮上の新たな方式が考え出された。これは安上がりの磁気浮上列車システムにつながる可能性が大きく,ロケット発射時の加速にも利用できる。
足踏みするドイツの計画 澤田一夫
21世紀の交通インフラの条件 中島林彦(編集部)
世界の研究室から
大人は言語が学べない? 太田光彦(エディンバラ大学理論・応用言語学部専任講師)
サイエンス考古学
水素爆弾に対する警告/重力場の方程式/原子力情報のスパイ/南極の開拓者/暗黒の深海/柔らかい装甲板/旧式の銛が刺さった鯨/新型の捕鯨銛/蒸気機関の時代
TOPICS
つまずく遺伝子治療/1pptレベルの環境ホルモン測定法/携帯電話で忘れっぽくなる/マラリア原虫が睡眠物質を作る/テクネチウムの発見者を見直す動き/過激になる動物愛護/高速化で競争/重力で質量は減るか/胚性幹細胞研究のガイドラインまとまる/宅地開発が招いたアスベスト汚染/はるかな星の惑星を観測/ミントの殺虫剤
空 模様
都会の空 文・平沼洋司/写真・武田康男
夢に賭ける
医食同源の発想で“食”の世界を拓く 大野寿彦(キリンビール基盤技術研究所所長)
錯覚の情報学
音源の位置で伸び縮みする聴覚の空間 柏野牧夫・西田眞也
脳の見方,モノの見方 36
昆虫の小さな脳を解き明かす 養老孟司×神崎亮平(筑波大学助教授)
WAVE
パソコンの処分問題深刻に/過熱するオンライン・ショッピングのサービス合戦/超広帯域電波使うレーダーで特許紛争
数学レクリエーション
不可能性の証明 I. スチュアート
ブックレビュー
『レーザーはこうして生まれた』 小山慶太
『超常現象の心理学』 太田次郎
<連載>森山和道の読書日記 ほか