日経サイエンス 1999年7月号

特集 組織工学 人体を再生する

1999年05月24日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

今月号の特集は人の臓器や器官をつくる「組織工学」。プラスチックや金属でつくる人工臓器ではありません。細胞やタンパク質(成長因子)を使って,組織になるように誘導します。ここまで進んだのかというのが実感ですが,研究が本格化したのはこの10年。今後が楽しみです。
次の「無限の宇宙は錯覚か」では,宇宙の“形”を考えてきます。文字どおり星の数ほどの星が見えるのは,実は遊園地にある「鏡の部屋」のようになっているだけかもしれません。ジェミニ望遠鏡と南極の隕石の話では,大きな成果の裏にあるドラマを紹介。
その他,カエルと田んぼの密接なかかわりと,同世代の人よりも先を考えた偉人を紹介します。

 

 

特集:組織工学 人体を再生する

臓器や組織を必要とする患者は多いが,提供者(ドナー)が少なく移植は思うように進まない。だが,新たな光明が見えてきた。細胞やタンパク質のはたらきをそのまま生かして組織や臓器をつくり出そうという研究が進んでいる。生きている人工皮膚はすでに製品化されたし,カプセル肝臓も臨床試験に入る。どの細胞にも分化できるヒトの胚性幹細胞も見つかった。これを使えば,臓器を丸ごとつくることも可能になるかもしれない。

 

バイオ人工器官の誕生  D. J. ムーニー/A. G. ミコス

 

臓器づくりの決め手──胚性幹細胞  R. A. ペダーセン

 

臨床応用進むカプセル臓器  M. J. リサト/P. アビシェル

 

人工皮膚の製品化  N. パレントー/G. ノートン/黒柳能光

 

新しい医療を目指して  R. S. ランガー/J. P. バカンティ

 

遅れる日本の組織移植  編集部

 

 

無限の宇宙は錯覚か  J. -P. ルミネ/G. D. シュタルクマン/J. R. ウィークス

宇宙は有限か無限か。トポロジーによると実は宇宙は有限で,無限のように見えるのは,単に有限の宇宙が繰り返し見えているからだけかもしれない。

 

田んぼのカエルの危機  大河内勇/宇都宮妙子/沼澤マヤ

カエルは湿地としての水田にすみついてきた。生息地の環境が変わってしまう圃場整備はカエルにとって一大事だ。田んぼの変容とそれに翻弄されるカエルの事情を紹介する。

 

ジェミニ望遠鏡の苦闘  G. スティックス

日本の新鋭望遠鏡「すばる」の強力なライバルとなる米英などのジェミニ望遠鏡が動き始めた。ここまで来るには財政難や設計方針をめぐる激論,現場技術者の苦闘があった。

 

隕石探索 南極大陸4000km  小島秀康

何日もやまぬブリザード,雪に埋もれた危険なクレバス,予期せぬ雪上車の故障……。南極隕石探査隊の8人は隕石を求め,80日間,白夜の大氷原を4000km旅した。

 

チューリングの忘れられた研究  B. J. コープランド/D. プラウドフート

人工知能の先駆者である英国のコンピューター科学の天才,アラン・チューリング。彼はニューラル・ネットワーク・コンピューターのアイデアも生み出していた。

 

 

 

世界の研究室から

 イチイの樹が拓いた生医学研究  尾島巌(ニューヨーク州立大学化学部長)

サイエンス考古学

新型ロケットで宇宙に一歩/夢の本質/セ氏の呼称確定/石炭の未来/死を招く花/初期の航路標識/重力に関する最新情報/科学に明るい皇太子

空 模様

 笠雲と吊し雲  文・平沼洋司/写真・武田康男

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 コンピューターに潜む人間らしさを探る  養老孟司×竹内勇剛(ATR知能映像通信研究所客員研究員)

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 <連載>森山和道の読書日記  ほか

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