特集:組織工学 人体を再生する
臓器や組織を必要とする患者は多いが,提供者(ドナー)が少なく移植は思うように進まない。だが,新たな光明が見えてきた。細胞やタンパク質のはたらきをそのまま生かして組織や臓器をつくり出そうという研究が進んでいる。生きている人工皮膚はすでに製品化されたし,カプセル肝臓も臨床試験に入る。どの細胞にも分化できるヒトの胚性幹細胞も見つかった。これを使えば,臓器を丸ごとつくることも可能になるかもしれない。
バイオ人工器官の誕生 D. J. ムーニー/A. G. ミコス
臓器づくりの決め手──胚性幹細胞 R. A. ペダーセン
臨床応用進むカプセル臓器 M. J. リサト/P. アビシェル
人工皮膚の製品化 N. パレントー/G. ノートン/黒柳能光
新しい医療を目指して R. S. ランガー/J. P. バカンティ
遅れる日本の組織移植 編集部
無限の宇宙は錯覚か J. -P. ルミネ/G. D. シュタルクマン/J. R. ウィークス
宇宙は有限か無限か。トポロジーによると実は宇宙は有限で,無限のように見えるのは,単に有限の宇宙が繰り返し見えているからだけかもしれない。
田んぼのカエルの危機 大河内勇/宇都宮妙子/沼澤マヤ
カエルは湿地としての水田にすみついてきた。生息地の環境が変わってしまう圃場整備はカエルにとって一大事だ。田んぼの変容とそれに翻弄されるカエルの事情を紹介する。
ジェミニ望遠鏡の苦闘 G. スティックス
日本の新鋭望遠鏡「すばる」の強力なライバルとなる米英などのジェミニ望遠鏡が動き始めた。ここまで来るには財政難や設計方針をめぐる激論,現場技術者の苦闘があった。
隕石探索 南極大陸4000km 小島秀康
何日もやまぬブリザード,雪に埋もれた危険なクレバス,予期せぬ雪上車の故障……。南極隕石探査隊の8人は隕石を求め,80日間,白夜の大氷原を4000km旅した。
チューリングの忘れられた研究 B. J. コープランド/D. プラウドフート
人工知能の先駆者である英国のコンピューター科学の天才,アラン・チューリング。彼はニューラル・ネットワーク・コンピューターのアイデアも生み出していた。
世界の研究室から
イチイの樹が拓いた生医学研究 尾島巌(ニューヨーク州立大学化学部長)
サイエンス考古学
新型ロケットで宇宙に一歩/夢の本質/セ氏の呼称確定/石炭の未来/死を招く花/初期の航路標識/重力に関する最新情報/科学に明るい皇太子
空 模様
笠雲と吊し雲 文・平沼洋司/写真・武田康男
TOPICS
電源が切れても情報を保持できる磁気RAM/ウィンクの秘密/高血圧は脳の縮小を早める/超小型マイクロホンの開発/原子レーザーで光が遅くなる/ミクロの秤/バイアグラは女性にも効くか/移植医療これからの課題/地球外生命体を探して/ロボットサッカー 阪大と慶大などが優勝/南極の氷はだれのものか/市民の手で南極のゴミ掃除/火星の大渓谷を飛行機で探査
高安秀樹のエコノフィジックス講座
為替変動と雑音に共通性
脳の見方,モノの見方 27
コンピューターに潜む人間らしさを探る 養老孟司×竹内勇剛(ATR知能映像通信研究所客員研究員)
WAVE
余波続く遺伝子組み換え食品騒動/性感染対策では防げぬHIV/ネット社会はミュージシャンの味方か/
結婚における受容と供給
数学レクリエーション
トポロジーもつれ話 I. スチュアート
ブックレビュー
『心や意識は脳のどこにあるのか』
『量子の道草/方程式のある風景』
<連載>森山和道の読書日記 ほか
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