日経サイエンス 1999年6月号

金星を襲った気候激変

1999年04月24日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

ご購入はお近くの書店または下記ネット書店をご利用ください。

編集部から一言

今回の目玉は金星を襲った暴走温暖化。水星よりも太陽に遠いところにありながら,水星よりも熱い灼熱の世界になった経緯を紹介します。
赤ちゃんに関する話題をふたつ。出産のタイミングを決めるホルモンの話と,ごく初期の胎児の体内を見る話。動物ものは,迫力いっぱいのコモドドラゴンです。ドラゴンの名は伊達ではありません。日本と米国で始まろうとしている素粒子の実験と,ぐっと現実的な車の衝突事故のシミュレーションの話。それから,久々の人物ものは,旧ソ連のサハロフです。

金星を襲った気候激変  M. A. ブロック/D. H. グリンスプーン

地球温暖化が深刻視されてきましたが,お隣の金星では,以前にけた違いの温暖化(灼熱化という方がふさわしい)が起きたようです。いったん始まった温暖化は加速しながら暴走しつづけ,灼熱地獄の大地になりました。

 

出産のタイミングを決める“胎盤時計”  R. スミス

通常は脳で見つかるコルチコトロピン放出ホルモンが,胎盤でもみつかりました。このホルモンが分娩の時期を左右することが判明。早産の予防につながりそうです。

 

サイエンス・イン・ピクチャー

胎児の体内を透視する  B. R. スミス

核磁気共鳴を使った顕微鏡技術の登場で,貴重な標本を切らずに中の様子まで観察できるようになりました。これまで,ほとんど知られていなかった,ごく初期の胎児の体内の様子を紹介します。

 

世界最大のトカゲ コモドドラゴン  C. チョーフィ

体長3m,体重70kg。生きた鹿をも襲う巨大な爬虫類です。迫力ありますよー。するどい歯には細菌兵器まであるとか。子どもはかわいいですけどね。こんなすごい生き物が今もいるのはわくわくしますが,開発などによって餌となる草食獣が減り,コモドドラゴンも減っているそうです。

 

ビッグバン直後を再現する  M. ムカジー

ビッグバン直後の宇宙では,クォークが自由に飛び回っていました(今では,クォークが単独で姿をあらわすことはありません)。米国で,宇宙誕生直後の世界を再現しようとする実験が始まります。

 

始まったニュートリノ振動実験  中島林彦

「ニュートリノに質量あり!」──世界中を駆け回った日本初の科学のビッグニュースです。もし本当に重さがあるとなると,現在の標準理論は崩れてしまいます。筑波から奥飛騨まで250km,日本列島の地下でニュートリノを飛ばし,その重さを測る実験が始まります。

 

ここまで来た車のバーチャル衝突試験  S. トムケ/M. ホルズナー/T. ゴラミ

安全性の向上のためとはいえ,CMなどにでてくる車の衝突実験を見てもったいないと思う人は多いはず。コンピューターシミュレーションでどこまで再現できるのでしょう?かなりいけるそうですよ。

 

水爆の父サハロフ,平和主義への“転向”  G. ゴレリク

かつては核兵器開発に熱心なエリート科学者だったサハロフ。その彼は,身の危険をかえりみず,核実験の停止を求め,人権のために闘うようになりました。その経緯をたどります。美談になりそうな題材をむしろ淡々と綴ります。

 

 

 

世界の研究室から

 コンピューターに日本語を教える  相川孝子(マイクロソフト社研究員)

サイエンス考古学

プレートテクトニクス以前/マラリア戦争/初期の潜水艦/ガンの病原微生物/マルコーニ/世界交易,速さではピカイチ/病んだ精神

空 模様

 逃げ水  文・平沼洋司/写真・武田康男

TOPICS

バイオテロ対策に力を入れる米国/不死身の細胞つくり/意外に高いヒトの突然変異率/カメラ付きアザラシ?/“スーパーカー”は誕生するか/だ液の抗菌作用/火星探査の序章/らせん状の宇宙ジェット/MITメディアラボおもちゃ作りに挑む

高安秀樹のエコノフィジックス講座

 駆け引きが生み出すカオス

脳の見方,モノの見方 26

 アフリカの牧畜民チャムスの世界観  養老孟司×河合香吏(静岡大学人文学部助教授)

WAVE

 「多種類・高品質・大量生産」を目指す米国の名門高校 一松信/米国医療制度の包括的改革は可能か/

 野球場における考察/マイクロプロセッサーに固有の番号,その功罪は?

数学レクリエーション

 ホタルの同時発光の謎を解く  I. スチュアート

ブックレビュー

 『生き物たちの神秘生活』

 『「複雑系」を超えて』

 <連載>森山和道の読書日記  ほか

掲示板