恐竜はこうして鳥になった K. パディアン/L. M. キアッペ
ヒトが哺乳類であるように,鳥って,恐竜そのものなんですよ。鳥の骨格は,哺乳類の骨格とも今いる爬虫類とも大きく違っています(フライドチキンを食べたら,骨の観察もしましょう)。けれども“鳥らしい”とされる骨格の特徴は,獣脚類恐竜もすでに備えていました。ただ,飛ぶためではなく,別の目的のためですが……。
意外に大きな偽薬の効能 W. A. ブラウン
これを飲めば絶対大丈夫―この一言で痛みなど,さまざまな症状が和らぐ場合があります。たとえ飲むのがただの砂糖でも。こうした偽薬効果は,安く,副作用もなく,しかも効果が期待できる方法です。いわゆる民間療法はもちろん,本当の治療さえ,こうした効果が働いているかもしれません(「ちゃんと先生に診ていただいたから大丈夫」)。もっと積極的に医療に組み込んでもいいのではないでしょうか?
超ひも理論からM理論へ M. J. ダフ
物理学者の究極の仕事は,森羅万象を説明するただ1つの理論を確立すること。超ひも理論がその候補に挙がっていましたが,限界も見え始めていました。新たに出てきたM理論は,超ひも理論を包含する,より大きな枠組みで,物理学者を熱狂させています。1996年3月号の「新局面を迎えた超弦理論」もあわせてお読み下さい。
グリーンランドの氷が語る気候の激変 R. B. アレー/M. L. ベンダー
氷は過去の気候を記録したレコーダーです。気候変動は通常は人間の感覚からするとゆっくり起きますが,過去10万年の間には,数十年で10度も気温が変わるような激変が20回以上も起きていました!日本版では「気候の激変は東アジアでも起きていた」を補足してます。
地球環境研究を左右する米軍事機密情報 J. T. リケルソン
軍事衛星の情報は一般とは比較にならない精度です。このデータをうまく利用すれば,科学研究に大いに役立つはず。冷戦終結後,ようやく機密情報部員と科学者が協力を始めました。
化学汚染物質があふれる室内の空気 W. R. オット/J. W. ロバーツ
工場や車などからの排ガス,排水には厳しい環境基準があります。ですが,大事なのは,個人が実際に有害物質にさらされている量です。米国の調査では,野外よりも室内の方がはるかに化学汚染物質の濃度が高く,危険でした。恐ろしいけれど,現実の話,身を守るために必要な知識です。
尺八の音はなぜ出にくい 吉川茂
尺八の穴はわずかに5つ。リードもありません。素人に音を出すことさえ難しい尺八ですが,熟練者は多彩で豊かな音を生み出します。筒の中の気流の動きを写真で紹介し,なぜ音を出しにくいのか,そして逆になぜあれほど幅のある音を出せるのかを探ります。
血液代替物の探索 M. L. ヌッチ/A. アバコウスキー
輸血はなくてはならない医療行為ですが,限界があります。血液型の適合,保存の難しさ,献血の量を考えると,血液代替物の開発がいかに大事かがわかるはず。代替物であればウイルス感染の心配もなくなります。
世界の研究室から
シカゴの実験室,ハワイの観測所 岡武史(シカゴ大学・化学教室・天体物理教室教授)
空 模様
蜃気楼 文・平沼洋司/写真・武田康男
TOPICS
トランジスタ時代の終焉,2010年にも/「自然の恵み」は2兆9000億ドル/持続可能な開発は地方分権が有利/異色の宇宙飛行士,NASAで訓練/巨大レーザーで解く超新星爆発の謎/アスベスト対策に朗報/見えた宇宙X線背景放射の正体/パリでロボカップ国際大会7月に開催/全国民の遺伝子データベース化を目指すアイスランド/日米の肝臓移植に新たな流れ/長寿遺伝子が見つかった/雪玉論争その後/ブラックホールの連続爆発を観測/ハーブ製品の規制めぐり議論/食肉の放射線殺菌,米で認可/光を選別するシリコンの孔
博物館の宝物
日本初のステゴサウルスの骨格標本 大阪市立自然史博物館
脳の見方,モノの見方 13
細胞死が保つ生命の秩序 養老孟司×田沼靖一(東京理科大学教授)
WAVE
プラスチック製フラミンゴがシラサギに変身/デジタル経済の時代の独占禁止法/奇妙な病名集
数学レクリエーション
円形サーディンの缶詰法 I. スチュアート