生物のかたちを決める力 D. E. イングバー
原子がタンパク質分子を,細胞小器官が細胞を,そして細胞が組織を作ります。原子をいくら調べてもタンパク質の機能がわからないように,細胞を調べても,生物の能力まではわかりません。細胞が集まると,個々の細胞にはなかった機能が表れるからです。こうした自己組織化を理解するには,テンセグリティーの概念を理解する必要があります。
未知の太陽系極域を旅するユリシーズ E. J. スミス/R. G. マースデン
地球などの惑星の軌道は,太陽の赤道面に並んでいます。数々の惑星探査機はすべて赤道面を旅していたわけです。極域は科学者にとって憧れの未踏の地。技術的困難さを乗り越え,太陽風の吹き荒れる極域をユリシーズがひた走る!
持続的管理は熱帯林を救うか R. E. ライス/R. E. ガリソン/J. W. レイド
商業木材の伐採をしながらも熱帯雨林を存続させる方法として採用されている“持続的管理手法”ですが,かえって森林の破壊を進めてしまうこともあります。
ピコ秒超音波で探るミクロの世界 H. マリス
超LSIの製品検査では,作ったLSIを壊して検査していました。1ピコ(1兆分の1)秒という非常に短い時間幅の超音波パルスの登場で,壊さずに,超LSIの微細構造がチェック可能になりました。
核廃棄物を深海底に埋める C. D. ホリスター/S. ナディス
海洋投棄とはまったく違います。深海底に埋めるのです。これを読むと,発電用の核廃棄物に比べ,核兵器から出る廃棄物の処分がいかに難しいのかがよくわかります。やっぱり,もたない方がいいわ。
母親の心音で赤ちゃんは安心するか 川上清文/高井清子/清水幸子/矢内原巧
心音を聞かせると,赤ちゃんは確かに泣き止みます。でも,泣き止ませるだけならば,人工音のホワイトノイズの方が効果があります。耳慣れない音に関心が向いて,泣くのを忘れてしまうようなのです。
ダ・ビンチと銃 V. フォレイ
ダ・ビンチは膨大な装置の図を残しています。中には彼が発明したものかどうかは疑問視されている装置もあります。歯車を使った銃の撃発装置もそのひとつ。けれども,著者はダ・ビンチの発明に間違いないと判定します。ところで,この撃発装置のおかげで,火種をもっている必要がなくなり,銃は隠し持つことが可能になりました。それまでは要するに火縄銃だったんですよ。
自然界を渡り歩く細菌のDNA R. V. ミラー
接合による遺伝子のやりとりは,有性生殖の原型として有名ですが,細菌の死骸から出たDNAを別の細菌が取り込んでいたりしているのです。細菌間の遺伝子の行き来は,それほど珍しくないのです。組み換え技術による細菌を安全に活用するためにも,こうした研究は大事なんです。
世界の研究室から
MITのジョークと真実 田中豊一(マサチューセッツ工科大学物理学部教授)
空 模様
光芒 文・平沼洋司/写真・武田康男
TOPICS
ここまでわかったストレスの害/天才は遺伝子がつくる?/NASA,月探査ケチケチ作戦/ネアンデルタール人は本当に私たちの祖先じゃないの?/科学と社会の関係を議論/鳥の脳も社会的刺激で発達/ゴキブリが操るロボット/二酸化炭素を地下に埋める/低迷する腎移植/にせモーツァルト出現/首なしカエルのニュースの余波/議論呼ぶレーザーによる衛星破壊実験/日本でシャチの赤ちゃん誕生
博物館の宝物
世界で唯一残るニューポール81E複葉機のエンジン 所沢航空発祥記念館
脳の見方,モノの見方 12
ネアンデルタール人──謎に満ちたかつての隣人 養老孟司×奈良貴史(東北大学助手)
WAVE
千葉大学“飛び入学”スタート/田んぼが変わり,カエルが減る 長谷川雅美/
装着型コンピューターの開発状況/爆薬で肉を極上に
数学レクリエーション
シャボン玉の幾何学 I. スチュアート
ブックレビュー
『量子力学のイデオロギー』
『シートン動物誌1 ピューマの遊び心』 ほか