日経サイエンス 1997年11月号

エイズに強い遺伝子の発見

1997年09月25日 A4変型判 27.6cm×20.6cm

定価1,466円(10%税込)

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編集部から一言

この号から,ちょっと誌面を変えました。詳しくは何が変わった日経サイエンスをご覧下さい。担当者Tが選ぶ今月のイチ押しは,エイズに強い人がもつ遺伝子の発見の話。ミトコンドリアのDNAが原因で起きる病気の話もミトコンドリアにたいする認識を改めさせられます。宇宙から地球の遺跡を見る話,逆に宇宙を見る天文台の話も気楽に読めて楽しめます。編集部内で,感想(というか印象)が見事に分かれたのは,昆虫の雄が交尾の性に雌に自分自身をプレゼントしてしまう話がなぜ進化してきたのか,という話(編集部内で印象が分かれたというのは,もちろん性別によります)。

エイズに強い遺伝子の発見  S. J. オブライエン/M. ディーン

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に何度もさらされているはずなのに感染しない人や感染してもエイズ発病までに時間がかかる人もいる。こういう人たちがもつ,エイズ耐性遺伝子がついに見つかりました!

 

宇宙時代の考古学  F. エル=バズ

近くでじっくり見ることも重要ですが,遠くから見ないとわからないこともあります。人工衛星で地表を眺めたら,アラビアの砂漠で幻のオアシス都市の遺構が,エジプト西部の砂漠では古代の大河の跡が見つかりました。

 

宇宙から古代エジプト遺跡を発見  坂田俊文

日本だって,この分野の研究は進んでいるんです。古代エジプトの未知の遺構を見つけてしまったのですから。

 

脳と筋肉を襲うミトコンドリア病  D. C. ウォレス

ミトコンドリアが独自のDNAをもつことは有名ですが,数が少ないのと,ミトコンドリアを作る遺伝子が核のDNAにあるため,それほど重視されていませんでした。ところが,ミトコンドリアDNAに異常があると,さまざまな深刻な病気になってしまうのです。しかも,症状は老化とも密接なつながりがあります。

 

思考のワーキングメモリー  T. ベアズリー

必要な情報を長期記憶から一時的に蓄えておくワーキングメモリーは脳の前頭前野にあった。今,話題になっているのは,前頭前野のなかで,さらにどこが,どういう処理をたんとうしているのかが,議論になっている。

 

昆虫に見る“愛と自己犠牲”の進化生物学  D. T. グウィン

交尾の際にある種の昆虫の雄は,自分の体の分泌物やときには,自分の体そのものを雌に捧げてしまう。一般に,雌は栄養を豊富に蓄えた卵を作るため,少数でも良質の遺伝子をもつ雄を交尾相手に選ぼうとする。一方,雄は,量より質である。なぜ昆虫ではこのような自己犠牲が進化してきたのだろうか。

 

サイエンス・イン・ピクチャー

アンデスに集まる世界の天文台  野本陽代

アンデスのアタカマ砂漠には欧州と米国の4つの天文台があり,新たに1つが建設中だ。年間350日も観測可能なこの地は,ハワイのマウナケアに次ぐ望遠鏡密集地帯である。

 

ヒストリー

天才物理学者ランダウの真実  G. ゴレリク

物性物理学の数々の業績によりノーベル賞を受賞した天才科学者は,なぜスターリン政権下で投獄されたのか。秘められたKGBファイルからランダウの実像に迫る。

 

 

 

新連載 世界の研究室から

 杜の都・オースチン  田島俊樹(テキサス大学教授)

空 模様

 虹  文・平沼洋司/写真・武田康男

TOPICS

宇宙から降りそそぐ雪玉/スペインで新種人類化石?/予算削減に悩む米科学界/恐竜の痛風/ドーキンス博士,コスモス国際賞受賞/ダムはいらない/アデノウイルスでガンを治療/グルメ症候群/東京から南極点のオーロラ観測

新連載 博物館の宝物

 ストロマトライト  神奈川県 生命の星・地球博物館

脳の見方,モノの見方 7

 カオスで見た世界  養老孟司×合原一幸(東京大学助教授)

WAVE

大雨と干ばつに見舞われる日本/どうチェックする“見せたくない情報”/冷戦の遺産引きずる北米防空司令部のコンピューターソフト/危機に瀕する米国の植物/ドライバーの縄張り根性

数学レクリエーション

 帝国と月世界植民地  I. スチュアート

ブックレビュー

 『消された科学史』

 『絶滅のクレーター』  ほか

Letter & Opinion

 小中高の教師への希望/教育基本法の原理に戻れ

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