
海外旅行をして時差ぼけに悩まされる人は多い。飛行機で一気に数千km移動すると,現地の昼夜のサイクルと自分の身体のリズムが合わなくなるのが原因だ。しかし,私たちは明暗を感じる器官を持っており,その働きで身体のリズムを調整することで時差ぼけが解消される。明暗を感じる器官は多くの動物が持っていて,例えばスズメは脳の中の特定の細胞が,オタマジャクシは皮膚の色素細胞がそうした役割を担う。では私たち哺乳類は? 1つの手がかりは一部の失明者が光を感じて瞳孔が収縮すること。盲目マウスを用いた動物実験などの研究が進んだ結果,私たちの眼球には物を見る以外の目的で光を感じている細胞があることがわかった。
著者
Ignacio Provencio
バージニア大学の生物学の准教授で,同大学でPh. D.を取得した。スワスモア大学のコープランド(Jon Copeland)の学生としてホタルやゴキブリ,ザリガニの研究をしていたとき,神経科学に関心を抱くようになった。
原題名
The Hidden Organ in Our Eyes(SCIENTIFIC AMERICAN May 2011)
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メラノプシン/光受容細胞/季節性感情障害/時差ぼけ/概日時計/網膜神経節細胞