日経サイエンス  2011年8月号

銀河はどこへ行った?

J. E. ギーチ(マギル大学)

 宇宙を構成する物質(エネルギー)のほとんどは正体不明の暗黒エネルギーと暗黒物質が占め,星々さらには私たちを形作っている普通の物質は全体の4%にすぎないことがわかってきた。だが,この“4%” についても大きな謎がある。銀河は群れ集まって銀河団を形成するが,それらを構成する星やガスを合算しても4%には到底達しないのだ。普通の物質の大半はどこに隠れているのだろう? 宇宙望遠鏡による観測や理論研究でその所在がわかってきた。宇宙を数十億光年スケールで見ると,銀河団を結節点とする巨大なネットワーク構造が浮かび上がる。それら結節点どうしを結ぶフィラメントに相当する領域に,莫大な量のガスが存在するようだ。

 

 

再録:別冊日経サイエンス196「宇宙の誕生と終焉 最新理論でたどる宇宙の一生」

著者

James E. Geach

銀河の進化,特に星形成の歴史と冷たいガスの進化を研究する観測天文学者。故郷の英コーンウォールの夜空に魅せられ,天文学を愛するようになった。現在カナダ・マギル大学のポスドク。妻のクリステンとビーグル犬のダーウィンと暮らしている。

原題名

The Lost Galaxies(SCIENTIFIC AMERICAN May 2011)

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