
物質を構成するのはクォークや電子などの各種の素粒子。近年,そうした素粒子のおおもとは1つの超微小な“ひも”であるとする「超ひも理論」が注目されている。私たちは時間を含め4次元の時空間を認識しているが,実はこの世界は10次元または11次元で,その中で超微小なひもが様々なパターンで振動しており,その振動パターンの違いを私たちは各種の素粒子として認識しているという。物理学はものの振る舞いを数学の言葉に置き換えて考える学問。例えば放り投げた石ころの動きは,ニュートンなどが考案した微積分の方程式で表される。では超微小なひもの10次元や11次元の振る舞いは,どのような数学の言葉で表されるのだろう?
数学者は素粒子が発見されるよりもはるか昔,150年以上も前にそれを用意していた。それが「八元数」という8次元の数体系だ。素粒子論研究者は,応用先が見つからず長い間ほこりをかぶっていたこの八元数こそが,森羅万象を記述する究極の理論を生み出す道具になるとみて,熱心に研究に取り組んでいる。
著者
John C. Baez / John Huerta
バエズはシンガポール量子技術センターを拠点に活動している数理物理学者。これまで基礎物理学の諸問題を探ってきた。ウェルタはカリフォルニア大学リバーサイド校で数学のPh. D.を取得する最終段階にある。超対称性の基礎を探る研究に取り組んでいる。
原題名
The Strangest Numbers in String Theory(SCIENTIFIC AMERICAN May 2011)