日経サイエンス  2011年7月号

サイエンス・イン・ピクチャー

X線望遠鏡NuSTAR

F. ハリソン(カリフォルニア工科大学) C. J. ハイリー(コロンビア大学)

 これまでの米航空宇宙局(NASA)の宇宙望遠鏡では,高エネルギーX線を収束してクリアな高品質画像を作ることはできなかった。2012年前半に打ち上げられる宇宙望遠鏡NuSTAR(Nuclear Spectroscopic Telescope Array)によって,それが初めて可能になる。図に示したようなミラーを2つと,検出器,展開可能なマストからなり,感度は従来のX線望遠鏡の100倍,解像度は人間の目に匹敵するようになる。
 X線カメラは光学カメラとは設計がまったく異なる。可視光は鏡に対して垂直に反射するが,X線は反射面に対してほぼ平行に跳ね返る。水切り遊びで石が水面沿いにスキップするのと似ている。このように反射する光を集光するにはガラス製のシェル(層構造)が必要で,それらをプラスチックの使い捨てカップのように積み重ねないといけない。それぞれのシェルが入射X線の一部をとらえ,シェル全体で焦点の合ったイメージを形成する。
 この望遠鏡で何が見つかるだろうか? 宇宙物理モデルの検証に役立つような変わった天体だろう。驚きの発見が待ち受けているに違いない。

著者

Fiona Harrison / Charles J. Hailey

ハリソンはNuSTARの首席研究者で,カリフォルニア工科大学の物理学と天文学の教授。ハイリーはコロンビア大学の物理学教授で,NuSTARの光学研究を率いている。

原題名

X-ray Vision(SCIENTIFIC AMERICAN February 2011)

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