日経サイエンス  2011年7月号

しのび寄るスーパー耐性菌

M. マッケンナ(科学ジャーナリスト)

人類は感染症との闘いに勝利を収め,医学の焦点はがんや生活習慣病に移った──そう思っている人は多いだろう。だが実は今,ほとんどの薬が効かず,治療が極めて難しい「スーパー耐性菌」が世界中に広がっている。「最後の砦」と言われた強力な抗生物質でも治療できず,患者は相次いで命を落としている。耐性菌の出現は今に始まったことではないが,今回は菌どうしが種を超えて耐性遺伝子を受け渡し,出合ったことのない薬剤にも耐性になっている点でより深刻だ。これまでは主に病院内で集団感染を起こしていたが,ついに市中にも広がり始めた。人類は今や,感染症になすすべもない時代に逆戻りしつつあるのかもしれない。

 

 

再録:別冊日経サイエンス188 「感染症 新たな闘いに向けて」

著者

Maryn McKenna

科学ジャーナリストおよびブロガーで,Wired誌に寄稿している。これまで世界各国で発生した感染症について,その状況を報告してきた。著書に「Superbug: The Fatal Menace of MRSA」や,「Beating Back the Devil: On the Front Lines of the Disease Detectives of the Epidemic Intelligence Service」がある。

原題名

The Enemy Within(SCIENTIFIC AMERICAN April 2011)

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