
宇宙が137億年前のビッグバンで始まった,というのはいまや多くの人がご存じの定説だ。誕生直後の宇宙が光速を超える猛烈な勢いで急膨張したという「インフレーション理論」も現代宇宙論を支える定説──と本誌の読者は考えているはず。ところが,同理論の発展に寄与してきた著者自身を含め,一部の物理学者たちは,そうは言い切れないとみる。研究が進むにつれ,その論理的基礎にいくつかの欠陥が見つかってきた。宇宙の中でインフレーションが続く領域が無限に生まれ,収拾がつかなくなるという。こうした“欠陥”は致命的なものなのか? インフレーション理論を修正・代替するさまざまな提案も生まれている。
著者
Paul J. Steinhardt
プリンストン大学プリンストン理論物理学センターの所長で,米国科学アカデミーの会員。インフレーション理論の功績により2002年に国際理論物理学センターからディラック・メダルを授与された。物質の新たな相「準結晶」の研究でも知られている。
原題名
The Inflation Debate(SCIENTIFIC AMERICAN April 2011)
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インフラトン/エターナルインフレーション/スカラー場/宇宙マイクロ波背景放射/測度/超ひも理論/重力波