日経サイエンス  2011年7月号

特集:揺れる原子力の将来

“想定外”に備える

A. ピオーリ(サイエンスライター)

 東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故は世界に衝撃を与えた。実際に深刻な事態が生じた以上,「想定外だった」と簡単にすませるわけにはいかない。一方,二酸化炭素排出ゼロの電力源として原子力への期待は大きく,米国では22基の原子炉新設計画がある。新設計の原子炉は,事故で原発への電力供給が失われても,人間による操作なしで安全機構が働く。「AP1000」と呼ぶ設計がその代表格だが,大規模災害など極端な状況にも耐えられるかどうか,改めて精査され始めた。“絶対安全” が神話である以上,電力会社も規制当局も一般市民も,“想定外” に備えるコストと安全性向上を秤にかけて考慮する必要がある。

 

再録:別冊日経サイエンス183「震災と原発」

 

著者

Adam Piore

ニューヨークを拠点に活動するフリーの科学ライターで,以前はNewsweek誌の記者を務めていた。本誌ではNewsScanの「特許ウォッチ」を執筆している。

原題名

Planning for the Black Swan(SCIENTIFIC AMERICAN June 2011)

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