日経サイエンス  2011年5月号

言語で変わる思考

L. ボロディツキー(スタンフォード大学)

「右手に見えますのは…」「左手は…」。観光バスのガイドさんの言葉で私たちは首を振るが,地球上には「左右」よりも「東西南北」で指し示してくれた方がわかりやすいという人々がいる。オーストラリアの先住民だ。なぜなのか? 彼らの話す言葉では,ものの位置関係や動きを方角で表す。だから,意思を疎通するために,彼らはどの方向が北なのか常に把握し,周囲を認識している。

これは一例だが,近年,言語が異なると,それにともなって認知能力も変わることを裏づける確かな証拠が得られ始めた。言語は,これまで科学者が認識していたよりも,ずっと多くの局面で思考を形作っているようだ。



再録:別冊日経サイエンス259『新版 認知科学で探る心の成長と発達』

著者

Lera Boroditsky

スタンフォード大学の認知心理学の助教で,Frontiers in Cultural Psychology誌の編集長。彼女の研究室は心的表象と,認識に対する言語の効果に焦点を当てた研究を世界中で実施している。

原題名

How Language Shapes Thought(SCIENTIFIC AMERICAN February 2011)

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