日経サイエンス  2011年4月号

ETの信号をつかんだら

T. フォルガー(科学ライター)

 文明が存在する天体は,この宇宙の中で地球だけなのだろうか。地球外知的生命体探査(SETI)のパイオニアで,現在SETI研究所の名誉会長であるドレイクは,「あくまで私の推測だが,現時点で天の川銀河に存在する検出可能な文明は,1万くらいあるだろう。つまり,数百万個に1つの星に検出可能な文明が存在する」という。

 

 SETI研究所は宇宙から届く電波を観測し,人為的に発信されたと思われる信号を探している。コンピューターの処理能力の向上により,天の川銀河内に存在する2000億もの星のうちの多くについて,それらから発せられる電波を今後数十年以内に調査できるようになるという。地球外文明の信号をキャッチする見込みは,十分にあるのだ。

 

 では,実際にETの信号をキャッチしたとき,何が起こるだろうか? ET発見後の行動に関する取り決めはあるものの,人々がそれに従うかどうかは微妙だ。事実,10数年前に米航空宇宙局(NASA)の観測衛星が発する信号をETの信号と勘違いする誤認騒動があったが,研究者たちはあまりの興奮に呑み込まれ,取り決めどころではなかった。誤った情報が未確認のままメディアに流れ,騒ぎとなった。本当にETの信号をキャッチしたとき,そのニュースが瞬時に世界中を駆け巡り,世界中がその話題で持ちきりになることは止められないだろう。

 

 だが,それも一時のことに違いない。信号から何らかの情報を引き出すには,現在,世界最大のパラボラアンテナの4桁大きいものを建設する必要がある。科学者がメッセージの解読に努めている間に大衆の関心は他のことに移っていく。ET発見は私たちの社会に影響するものの,大変革につながることにはならないだろう。

 

 

再録:別冊日経サイエンス200「系外惑星と銀河」

著者

Tim Folger

20年以上の経歴を持つ科学ライター。2007年に米国物理学協会のScience Writing Awardを受賞した。彼の記事はDiscoverやNational Geographic,Scienceなどで読むことができる。

原題名

Contact: The Day After(SCIENTIFIC AMERICAN January 2011)

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