
私たちが直接見ることのできる宇宙は全体の4%にすぎない。残りは「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」と呼ばれる“暗黒成分”だ。暗黒物質が存在することは星や銀河の異常な運動などからほぼ間違いないが,その正体は依然としてつかめていない。
暗黒物質は通常の物質とはほとんど相互作用しない,非社交的な物質だと考えられてきた。暗黒物質は,通常の物質の6倍も存在しているにもかかわらず,直接観測されていないからだ。多くの研究者は,暗黒物質は「超対称性」にしたがって既知の粒子と対をなすパートナー粒子「ウィンプ」でできていると考えている。ウィンプが現在どのくらい存在するかは理論的に予言でき,その値は観測値と一致している。
そして現在,そのウィンプをとらえようと,世界中の実験家がしのぎを削っている。岐阜県神岡鉱山で準備が進むエックスマス実験もその1つだ。
だが,暗黒物質の構成粒子がウィンプだとする根拠は,理論的にも観測的にもない。著者らは暗黒物質が自然界の4つの力とは別の“暗黒の力”で相互作用する一連の粒子で構成されている可能性を探っている。このような粒子も,ウィンプ同様,現在の暗黒物質を説明するのにちょうどよい数が残るという。
暗黒物質は,自然界の新しい種類の力を介して相互作用する雑多な粒子からなり,それ自体が私たちの宇宙にひっそりと絡み合うもう1つの宇宙なのかもしれない。
著者
Jonathan Feng / Mark Trodden
フェンは理論物理学者で,暗黒物質を中心に素粒子物理と宇宙論が交わる領域を研究している。現在,カリフォルニア大学アーバイン校物理天文学科教授。以前はトランペットの演奏に興じていた。トロッデンは素粒子物理学と宇宙論を研究している。ペンシルベニア大学素粒子宇宙論センターの共同センター長で,物理学関連のブログ「Cosmic Variance」の著者の1人だ。宇宙について考えていないときには,乱雑なキッチンでワインをちびちび飲んでいることが多い。
原題名
Dark Worlds(SCIENTIFIC AMERICAN November 2010)
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