
大成功を収めているハッブル宇宙望遠鏡の後継機が,2014年の打ち上げを目指して建設されている。アポロ計画時代の米航空宇宙局(NASA)の長官の名前にちなんだ「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」だ。
後継機とはいっても,ウェッブ望遠鏡はさまざまな点でハッブル望遠鏡とは大きく異なる。ウェッブ望遠鏡の口径6.5mの主鏡は,ハッブル望遠鏡の7倍もの集光力を持つ。また,ウェッブ望遠鏡は,ハッブル望遠鏡と違って可視光ではなく,赤外線で観測する。ビッグバン後に最初に生まれた星の大爆発を観測できるかもしれないし,ガスと塵の雲の中をのぞいて,恒星や惑星系が生まれる様子を探ることもできるだろう。
ウェッブ望遠鏡は総重量が6トンにも及び,大きすぎて打ち上げロケットにそのまま収めることができない。そのため,18枚のセグメント鏡で構成される主鏡は,折りたたみ式のダイニングテーブルのように,両翼3枚ずつを折りたたんだ状態でロケットに積み込まれる。NASAゴダード宇宙センターのクランパン(Mark Clampin)の言葉を借りれば,ウェッブ望遠鏡は「オリガミ望遠鏡」だ。
この計画の最大の山場は,折りたたまれた望遠鏡を宇宙空間で展開するときだ。幅11m,長さ19mの太陽光遮蔽パネルを展開した後,主鏡の両翼をうまく広げて1枚の鏡に仕立てる。ウェッブ望遠鏡は月よりも遠い第2ラグランジュ点と呼ばれる地点を周回するため,万一トラブルが発生した場合でも,ハッブル望遠鏡のように宇宙飛行士が修理に出向くことはできない。ちょっとしたミスでも50億ドルの天文台が役に立たない代物になってしまうのだ。
「私たちはハッブル望遠鏡よりはるかに革新的な望遠鏡を建設し,見られる限りの昔を観測するためには,どんな苦労も惜しまない」と,カーネギー天文台のドレスラー(Alan Dressler)はいう。「NASAは旧世代最後の望遠鏡を作るより,新世代最初の望遠鏡を建設するという大志を抱いている」。
著者
Robert Irion
Science誌の元通信員で,現在はカリフォルニア大学サンタクルーズ校でサイエンス・コミュニケーションのコースを率いている。Smithsonianなどの雑誌に天文学の記事を書いている。
原題名
Origami Observatory(SCIENTIFIC AMERICAN October 2010)
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