日経サイエンス  2011年1月号

昭和基地の空 理科教師の越冬記

文・写真 武田康男(第50次日本南極地域観測隊)

 高緯度であること,極低温であること,空気が清浄であること──この3つがあいまって,南極では日本ではあまり見られない空の現象を観測できる。第50次日本南極地域観測隊の越冬隊員として,2008年12月に日本を発ち,2010年3月に帰国した著者が,美しい写真を交えて,昭和基地のまわりで観察できる自然現象を紹介する。

 

 たとえば,雲ひとつをとっても南極と日本では違う。気圧が低いため,雲のできる位置が低く,地上から見ると,雲の動きは速く見える。大きな熱源がないため,積乱雲(かみなり雲,入道雲)は南極にはない。その一方で,極成層圏雲や極中間圏雲など,高緯度地域だけで観察できる雲もある。

 

 地表が冷たいので,光の屈折による蜃気楼も見える。日の出・日の入りのときに日本ではごく稀に観察できるグリーンフラッシュも,太陽が横に移動する南極では観察しやすい。

 

 太陽は,高緯度ならではの不思議な動きをする。白夜の時期は一日のうちに太陽が東西南北すべての方向からさすことになる。月の動きはもっと複雑で,数日間出たまま,あるいは沈んだままとなる。

 

 昭和基地はオーロラが出現しやすい「オーロラ帯」の真下にあるので,オーロラ観測にはぴったりの場所だ。空気がきれいなので星空の美しさも格別だ。

 

 雪の結晶を観察するにも昭和基地は適しているようだ。雪の結晶は,温度と湿度の組み合わせでさまざまに形を変えるが,昭和基地ではまさに多種多様な結晶が見られる。

著者

武田康男(たけだ・やすお)

千葉県の県立高校で理科教諭として教鞭を執るかたわら,気象現象を中心とした写真を撮り続けている。気象予報士。南極滞在は著者の長年の夢であったが,その一方で,日本は国内で多種多様な気象現象を観察できる恵まれた国だとも言う。著書に『すごい空の見つけかた』『楽しい気象観察図鑑』(ともに草思社)など。

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