
20世紀がジェット機や宇宙旅行,インターネットなどに象徴される限りない拡大の時代だったとすれば,21世紀このかたは,私たちが住む小さな地球の限界を見せてくれた。大規模な地域停電は,私たちが当然のように思ってきたエネルギー供給がそう潤沢ではないことを思い知らせた。かつて雄大な流れだったコロラド川は,乾いた米国西部の大都市への給水によって細り,もはや海に達しないうちに流れが絶えている。石油資源を見つけるのは非常に難しくなり,新たな油井を海底下に何千mも掘らねばならない。
果てしなく広がっているように思えた大気はいま,産業革命以降の200年に排出された温室効果ガスによってゆらいでいる。そして,生命そのものまで尽きようとしているようだ。生物学者たちが警告しているように,現代の私たちは恐竜を滅ぼした絶滅事象に匹敵する規模の世界的大絶滅のさなかにいる。資源と環境に関するこの逼塞状況は,中国やインドなどの国々における中産階級の台頭に伴ってさらに強まり,今後の世界を規定していくだろう。私たちに残された資源はどれだけなのか。時間的な要素を含め,全体像を図で示した。
原題名
How Much Is Left?(SCIENTIFIC AMERICAN September 2010)