日経サイエンス  2010年12月号

特集:「終わり」を科学する 

終末論に引かれるわけ

プロローグ

M.モイヤー(SCIENTIFIC AMERICAN編集部)

 21世紀になって10年が過ぎた。世紀末は遠いが,人類や地球の行く末に暗い影を感じる人は多いかもしれない。新型インフルエンザの世界的流行(パンデミック)でマスク姿の人々が街中にあふれたのはつい1年前。幸い犠牲者は少なかったが,致死性の高いインフルエンザウイルスによるパンデミックはいつ始まってもおかしくはない。温暖化問題は深刻の度を増しているが,大気中の二酸化炭素濃度の上昇には依然として歯止めがかかっていない。このまま進んだ先に明るい未来が待っていることはない。世界人口は増加の一途で,熱帯のジャングルなどは開発によって日々,膨大な面積が失われ,種の絶滅が進んでいる。

 

 日経サイエンスはちょうど1年前の2009年12月号で「始まり」をテーマとする特集「『起源』に迫る」を出したが,今号ではそれと対をなす「終わり」をテーマとした特集「『終わり』を科学する」を編んだ。かつてブームとなったノストラダムスの大予言もそうだが,私たちはなぜか世界の終わりや人類滅亡の日といった話題が好きだ。

 

 プロローグ「終末論に引かれるわけ」では,その理由について,識者のコメントも交えて述べられているが,大げさに言えば,それは進化の過程で獲得されたヒトという種の特性かもしれない。

原題名

Eternal Fascinations with the End(SCIENTIFIC AMERICAN September 2010)

サイト内の関連記事を読む