日経サイエンス  2010年11月号

スーパーアース 別の太陽を回る地球

D. D. サセロフ(ハーバード大学) D.バレンシア(コート・ダジュール天文台)

 空には,たくさんの惑星が,恒星の陰で“ひっそりと”存在している。そのなかに,生命がすむ惑星はあるのだろうか?

 

 これまでに発見された系外惑星のほとんどは,木星のような巨大ガス惑星だ。一方,質量は地球の数倍もあるものの,地球と同じ組成の惑星「スーパーアース」も,2005年に発見されたGJ876dを皮切りにいくつか見つかっている。

 

 著者らは地球に似た組成を持つ惑星を理論的に検討し,たとえ地球に比べて質量が大きくても,地球物理学的に活動的で,生命に適した大気や気候を備えうることを突き止めた。スーパーアースは,生命を宿している可能性のある惑星として注目されている。

 

 2009年にケプラー宇宙望遠鏡が打ち上げられ,新惑星の発見を目指して観測が続けられている。惑星は,恒星に比べると光源としてはあまりに弱く,ほとんどの場合,直接見ることは不可能だ。ケプラー望遠鏡は,恒星から届く光のわずかな変化をとらえて惑星を検出する。減光の度合いから惑星の大きさがわかり,他の観測手段で得られる質量の情報と組み合わせて密度を求めれば,惑星が何でできているかも突き止められる。ケプラー望遠鏡による観測で,スーパーアースが数百個程度見つかるものと期待されている。

 

 スーパーアース探査時代は幕を開けたばかりだ。ケプラー望遠鏡に続く次のステップは,新たに発見された惑星の大気を研究し,生命の兆候を発見することだ。数年後に打ち上げられる予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に,その任務は託される。ケプラー宇宙望遠鏡は15万個の星を追いかけて,ジェイムズ・ウェッブ望遠鏡のターゲットとなる惑星を数多く見いだしてくれることだろう。

 

 

再録:別冊日経サイエンス200「系外惑星と銀河」

著者

Dimitar D. Sasselov / Diana Valencia

ブルガリア生まれのサセロフは,同国のソフィア大学で物理学のPh.D.を,カナダのトロント大学で天文学のPh.D.を取得し,1998年からハーバード大学の天文学教授を務める。恒星と系外惑星の進化と構造を専門とし,実際にいくつかの系外惑星を発見している。物理学と生命科学の科学者が参加するハーバード大学のプログラム「生命起源イニシアチブ」の創設者で責任者でもある。バレンシアは地球物理学と天体物理学を組み合わせて固体惑星の構造とダイナミクスを明らかにした画期的研究で,2008年にハーバード大学でPh.D.を取得した。現在は,フランスのニースにあるコート・ダジュール天文台でポアンカレポスドクフェロー。2010年にNASAのカール・セーガン特別研究員に選ばれている。

原題名

Planets We Could Call Home(SCIENTIFIC AMERICAN August 2010)

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