
見えない,聞こえない,感じられない。でも宇宙から大量に降りそそいでおり,私たちの身体を通り抜けている。ニュートリノはそんな不思議な粒子だ。 このニュートリノを茨城県の東海村で作り,日本の地中を横断させて,岐阜県の神岡町でつかまえる。今年1月,そんな実験が始まった。名付けて「T2K(東海 To 神岡)」実験だ。
茂木健一郎さんが出発点となる東海村の巨大実験施設「J-PARC」を訪ね,リーダーの小林隆教授らに,T2K実験の全貌を聞いた。小さな箱の中で生まれた陽子の種が,長い長い加速器を走り抜け,円形のシンクロトロンをグルグルと回り,光速近くまで加速されて,原子核にぶつかる。そのときに飛び出す粒子からニュートリノができ,神岡に向けて発射される。
実験はニュートリノが旅する「前」と「後」で,どのように変化しているかを探るのが目的だ。それが見えれば,現在の素粒子理論である「標準理論」の先にある,新たな理論を開く手がかりになるという。
「たぶん今が一番楽しい時」という小林教授。日本を代表するビッグサイエンスの現場を,動き出した巨大な実験装置の数々と,それを支える人々の言葉でお伝えする。
ゲスト:小林隆(こばやし・たかし)
小林隆は高エネルギー加速器研究機構教授。1968年,岡山県生まれ。広島大学大学院理学研究科で学位取得,理学博士。96年東京大学原子核研究所助手,97年高エネルギー加速器研究機構助手,同助教授を経て2007年から現職。東大時代からT2Kの前身となるK2K実験に携わり,一貫してニュートリノ実験に取り組んでいる。最近の趣味は水泳。
ホスト:茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
茂木健一郎はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年,東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了,理学博士。理化学研究所などを経て現職。慶應義塾大学研究特別教授。専門は脳科学,認知科学。「クオリア」をキーワードに脳と心の関係を研究している。著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社),『脳と仮想』(新潮社)ほか多数。
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