日経サイエンス  2010年8月号

ハイパーカミオカンデ構想

中島林彦(編集部) 協力:東京大学宇宙線研究所

 日本は奥飛騨山中の神岡鉱山の地下に3つのニュートリノ研究施設を建設,この分野で世界をリードしてきた。

 

 まずカミオカンデは超新星爆発によるニュートリノをとらえてニュートリノ天文学を開拓。後継のスーパーカミオカンデは宇宙線と大気の衝突で生まれるニュートリノと太陽からのニュートリノを観測してニュートリノの質量を発見した。カムランドは原子炉からのニュートリノを測定してニュートリノの質量の存在を検証し,地球深部からのニュートリノの観測にも成功した。そして今,神岡鉱山の地下では2つの新たなプロジェクトが走り始めた。

 

 1つはスーパーカミオカンデを改造して超新星ニュートリノの検出感度を引き上げる計画で,そのための実証試験装置の建設が進んでいる。もう1つはスーパーカミオカンデの20倍の規模のハイパーカミオカンデ。構想段階だが,まずは基本設計をまとめるため,設置予定場所の地下構造探査や観測システムの検討が本格的に始まった。いずれも実現の暁にはニュートリノ天文学やニュートリノ物理学を革新する成果が上がると期待されている。

 

 

再録:別冊175「宇宙大航海 日本の天文学と惑星探査の今」

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