日経サイエンス  2010年5月号

スペシャル対談

海の生き物の心を読む

中村宏治(水中写真家) 茂木健一郎(ソニーコンピュータサイエンス研究所)

「魚だって,警戒すると上目遣いになるし,わからない時は首をかしげる。僕らと共通のボディランゲージが沢山あります」。水中写真家の中村宏治氏はこう話す。45年間海に潜り続け,数々の海の生き物をカメラに収めてきたが,「撮影は全体のごく一部。むしろ相手の気持ちを読んで,駆け引きをしながら,いい位置に入れるように持っていくのが仕事」だという。

脳科学者の茂木健一郎氏がそんな中村氏の撮影拠点である伊豆のスタジオを訪れ,そんな海の生き物たちとの駆け引きについて聞いた。大西洋のマッコウクジラの撮影では間一髪で危機をから逃れ,インドネシアでは人間の習性を知って学習してしまった賢いタコに口あんぐり。19年にわたって見続けてきた佐渡島のコブダイの私生活(?)や,海外のドキュメンタリー映画で有名になったムラサキダコの見事な戦略など,中村氏が間近で見てきた海の生き物の生態は,驚きに満ちている。

海の生き物たちの躍動を,ページを倍増し,中村氏自身が撮った写真を満載したスペシャル版でお伝えする。

「茂木健一郎の科学の興奮」に収載

ゲスト:中村宏治(なかむら・こうじ)
中村宏治は水中写真家。1947年,東京都生まれ。中央大学卒。18歳でスクーバダイビングを始め,海洋生物の権威,益田一氏に伊豆海洋公園で水中撮影を学ぶ。1978年に日本水中映像を設立。映画,テレビ,CM,展示映像など,数々の水中撮影を手がける。世界的な話題となったアート展「Ashes and Snow」の撮影など,海外でも活躍している。

ホスト:茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年,東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了,理学博士。理化学研究所などを経て現職。東京工業大学大学院客員教授。専門は脳科学,認知科学。「クオリア」をキーワードに脳と心の関係を研究している。著書に『脳とクオリア』(日経サイエンス社),『脳と仮想』(新潮社)ほか多数。

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