日経サイエンス  2010年1月号

日本・ボリビア共同調査で探る 古代アマゾン文明

実松克義(立教大学)

 アマゾンの地は環境があまりに過酷なため高度な文明は発生しないと,かつて人類学では考えられていた。ところが実際は,「アマゾンに栄えていた田園都市文明」にもあるとおり,アマゾンの各地で大規模な文明の痕跡が見つかっている。その存在が確認された地を挙げると,アマゾン河口のマラジョ島,サンタレム地域,マナウス近郊,シングー川上流域,エクアドル・ウパノ川上流域,ペルー・アマゾン,ブラジル・アクレ州のリオ・ブランコ一帯,ボリビアのモホス大平原などがある。

 

 これらのアマゾン古代文化群の中で最大規模を誇るのが,ボリビア・アマゾンにあるモホス大平原に存在したものだ。面積にして25万km2に及ぶ広大な氾濫原の全域にわたって,2万カ所を超える居住地跡や直線道路,運河網,広大な農耕地跡,巨大な人造湖が見つかっている。

 

 著者はこの文明の解明を目的とした日本・ボリビアの合同調査プロジェクトを実施しており,本記事ではその研究成果を古代アマゾン文明の歴史や特徴と交えて紹介する。

 

 

再録:別冊日経サイエンス189 「都市の力 古代から未来へ」

著者

実松克義(さねまつ・かつよし)

立教大学異文化コミュニケーション学部教授。同大学ラテンアメリカ研究所長。専門は宗教人類学。過去20 年にわたり中南米の先住民族宗教文化について,マヤ地域,アンデス地域,およびアマゾン地域においてフィールドワークを行う。2005年より,ボリビア・アマゾン,モホス大平原に存在した古代文明を解明する日本・ボリビアの合同調査プロジェクトを実施している。主著に『マヤ文明 聖なる時間の書─現代マヤ・シャーマンとの対話』(現代書林),『アンデス・シャーマンとの対話─宗教人類学者が見たアンデスの宇宙観』(現代書館)。

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