
かつて「コンピューター」とは人間のことだった。18世紀,革命期のフランスでは,メートル法導入に伴う土地台帳の変更のために数十人が雇われて計算作業に当たり,膨大な数表を作成した。コンピューターとは,彼ら“計算人”を意味していたのだ。
この作業の機械化に最初に挑んだのが,英国の数学者バベッジだ。彼は産業革命のまっただ中に最初の機械式計算機「階差機関」を設計し,1832年にその試作モデルを完成した。そればかりか,その後継となる本格的なコンピューターの設計図も作った。演算を担うプロセッサーとデータを保存するメモリーを備え,外部入力によってプログラムを変えることもできる,現在のコンピューターの機械版だ。資金不足のために実現には至らなかったものの,後世になって,バベッジが遺した設計図をもとに実際に作られた。
バベッジの計画が頓挫した後,再びデジタルコンピューターが脚光を浴びたのは,第二次世界大戦のころだ。米ペンシルベニア大学ムーア校の計算機科学者モークリーと工学者エッカートが,それまで使われていた機械式アナログコンピューターの電子化に取り組んだ。1945年にこうして誕生したのが,最初の電子式計算機ENIACだ。その後天才数学者のフォン・ノイマンがチームに加わり,現在も主流となっているプログラム内蔵型のコンピューターアーキテクチャーを開発。後継機となるEDVAC開発へとつながった。
本稿ではバベッジが始めてノイマンが完成させた,プログラム内蔵型デジタルコンピューターの発展の軌跡を追う。また,その後のハードウエアとソフトウエアの発展を振り返り,マイクロソフトのビル・ゲイツらをこの分野に呼び込んだ発明についても紹介する。
著者
Martin Campbell=Kelly
原題名
Origin of Computing(SCIENTIFIC AMERICAN September 2009)
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