日経サイエンス  2009年11月号

新型インフルエンザ 本当の怖さ

古田彩(編集部)

 2009年4月に流行が始まった新型インフルエンザ。発生当初は大騒ぎになったが,かねて懸念されていた鳥インフルエンザほど病原性が強くないことが判明すると,一転して「普通のインフルエンザと同じ」とのイメージが広がった。

 

 だが,その認識は正しくない。新型インフルエンザは,子供から中高年の幅広い世代に,重症の肺炎を起こすことがわかってきた。患者全体からみればごく一部だが,悪化すれば人工呼吸器が必要になり,最悪の場合は死に至る。

 

 季節性インフルエンザでも重症肺炎は起きるが,そのほとんどは細菌による二次性肺炎で,患者は高齢者が免疫不全の患者だ。だが新型インフルエンザはウイルスそのものが肺で増えるウイルス性肺炎で,若くて健康な人も一定の割合で重症化する。感染が先に広がったメキシコや米国では,20代から50代の働き盛りの世代を直撃し,命を奪った。

 

 なぜ新型インフルエンザは,季節性インフルエンザとは違う肺炎を起こすのか。重症肺炎とはどのような病気で,防ぐにはどうすればいいのか。新型インフルエンザウイルスによる重症肺炎について,その実態と対策を探る。

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