日経サイエンス  2009年10月号

サイエンス・イン・ピクチャー

砂漠から甦った恐竜たち

中島林彦(群馬県立自然史博物館)

 生物にとって最も過酷な地域は砂漠だ。植物はほとんど見られず,動物や昆虫は小さくて,猛暑の日中は砂の中に潜っているものが多い。だが,そんな砂漠も数千万年から1億数千万年の時を遡れば別世界だった。水辺があって植物が生い茂り,体長数十mに達する恐竜たちが闊歩していた。実際,これまでに発見された恐竜化石の半数以上が砂漠とその周辺地域から発掘されている。

 

 世界の砂漠の中で,最も早く発掘が始まったのは北米ロッキー山脈東側一帯の荒れ地「バッドランド」。20世紀末になると中国のゴビ砂漠やジュンガル盆地などが世界的注目を集め,21世紀に入った今日,アフリカのサハラ砂漠などでも発掘調査が本格化しつつある。千葉市の幕張メッセで9月27日まで開催中の恐竜展では世界の砂漠で近年発掘された恐竜化石が一堂に集まった。

 

 中でも注目を集める恐竜は4体。中国のゴビ砂漠で発見された巨大な羽毛恐竜「ギガントラプトル」と,同じく中国のジュンガル盆地から出てきた全長35mの世界最大級の植物食恐竜「マメンキサウルス」。北米バッドランドの恐竜では全身のクリーニング作業が終わったばかりの恐竜のミイラ化石「ダコタ」。恐竜のミイラ化石は世界で数体しか見つかっていない貴重なものだ。サハラ砂漠からは巨大肉食恐竜「スピノサウルス」。戦前,ドイツの調査隊が発掘したものの,戦災で化石が失われ,幻の恐竜となっていた。それが今回,戦前の論文に記されていた骨のデータや,当時撮影されていた化石の写真,近縁恐竜の化石の知見などをもとに全身骨格が復元された。これらの恐竜化石の写真を中心に紹介する。

著者

長谷川善和(はせがわ・よしかず)

群馬県立自然史博物館館長,横浜国立大学名誉教授。専門は古生物学。中国や米国など世界各地で恐竜化石の発掘調査に取り組む。1968年に福島県で発見された「フタバスズキリュウ」の研究に当初から携わる。2007年には石川県の手取層(恐竜化石が産出する地層として知られる)で,新しい恐竜足跡化石を発見した。近著は『フタバスズキリュウ発掘物語』(化学同人,2008年)。

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