日経サイエンス  2009年9月号

意外な星にも惑星が

M. W. ワーナー(NASAジェット推進研究所) M. A. ジュラ(カリフォルニア大学ロサンゼルス)

 惑星というものは太陽のような星の周りを回っているものと思われていた。しかし,15年前からの相次ぐ発見により,多くの惑星系が太陽系とは大きく異なっていることが明らかになってきた。

 

 最初に発見された太陽系外の惑星は中性子星の周りを回っていた。中性子星は,太陽の20倍も質量があった恒星が超新星爆発を起こしてできた,いわば“星の亡き骸”。超新星爆発は激しい現象で,周りの天体が生き残れるとはとても思えない。その周りを回っている惑星は超新星爆発の“灰”が集まってできたと考えられている。

 

 また,太陽のような星の亡き骸である白色矮星の多くで,塵円盤が観測されている。これらは,太陽系のカイパーベルトのように星から遠く離れた小天体が星の死の嵐の中を生き延びた,あるいは生き延びた天体が白色矮星の潮汐力で破砕されてできたと考えられている。太陽が死んだあと地球が生き残れるかはわからないが,太陽系も遠くにある惑星や彗星は生き延びて,存在し続けるのかもしれない。

 

 太陽よりずっと小さく,大型の惑星程度の質量しかない褐色矮星の周りでも,惑星が生まれつつある証拠が見つかっている。惑星系はいろいろなところに存在しているようだ。宇宙全体を見わたせば,惑星あるいは生命体にとって,太陽系は惑星系の典型というわけではないのかもしれない

 

 

再録:別冊日経サイエンス187 「宇宙をひらく望遠鏡」

著者

Michael W. Werner / Michael A. Jura

ワーナーはNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡のプロジェクト研究員で,NASAジェット推進研究所の天文学・物理学の主任研究員。35年以上にわたって赤外線天文学に携わり,星形成や星間物質,銀河の中心部を研究している。スピッツァー以外の楽しみは,絵を描くことだ。ジュラはカリフォルニア大学ロサンゼルス校の天文学者で,低温・低密度環境の天体物理学と系外惑星系を研究している。幼少期に読んだSF小説に影響されて系外惑星に興味を持つようになった。

原題名

Improbable Planets(SCIENTIFIC AMERICAN June 2009)

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