
オバマ大統領の就任で,米が環境政策の積極推進に転じるのではとの期待が高まっている。今のところ,米の全消費エネルギーのうち再生可能エネルギーで賄われているのは7%に満たないが,環境問題はもちろん,貿易赤字の削減やエネルギーの海外依存是正の観点からも,普及が急務とされる。
米New York Times紙の気鋭の環境記者が,再生可能エネルギー推進に必要な3つの条件――低コストでのエネルギー産生,効率のよいエネルギー輸送法の確立,使いやすいエネルギー貯蔵の開発――に着目。それぞれについて,現在米国で開発・利用が進んでいる要素技術を紹介する。産生方法としては太陽熱,地熱,風力,太陽電池,海洋波力を,輸送と貯蔵については燃料電池,圧縮空気,大規模送電網,蓄電池,氷蓄熱を取り上げ,それぞれについてコストや規模,開発段階,普及への課題などをわかりやすくまとめている。米の環境技術の現状と見通しが,一読してわかる。
著者
Matthew L. Wald
New York Times紙の記者で,1979年以来エネルギー問題を取材している。これまでに石油精製や発電,電気自動車とハイブリッド車,大気汚染などについて執筆している。現在はワシントンD.C.を拠点にし,交通輸送の安全問題などのテーマも扱っている。
原題名
The Power of Renewables(SCIENTIFIC AMERICAN March 2009)