
「牛が地球温暖化の原因に」というと,糞尿やげっぷに含まれるメタンガスが有名だ。でも牛肉を食べることによる温暖化効果はそうした直接の影響だけではない。家畜として牛を育てるには,牧草やトウモロコシなど大量の植物性飼料を食べさせなければならず,放牧する場合は広い牧草地が必要だ。いずれもそのためにCO2(二酸化炭素)吸収効果のある森林が失われることになる。穀物や野菜を栽培してそれを人間が食べるより,牛肉の生産ははるかに生産効率が悪く,それだけ温暖化に与える影響も大きい。豚や鶏でもその点は同じだが,牛は体が大きい分,さらに効率が悪い。牛肉1kgを生産するとCO2換算で14.8kgもの温暖化ガスが発生する。これは鶏肉の13倍,ジャガイモの57倍だ。世界の人口増加と経済成長とともに貧しかった地域でも牛肉を食べるようになってきており,牛肉の需要は今後ますます増大しそうだ。
著者
Nathan Fiala
カリフォルニア大学アーバイン校経済学専攻の博士号候補生。食生活が環境に与える影響を研究している。また世界銀行(ワシントン)で,開発プロジェクトの評価にも携わっている。趣味はインディペンデント映画の鑑賞とヨット。この論文のもととなった,食肉生産が環境に与える影響についての彼の研究は,Ecological Economics誌に掲載された。
原題名
The Greenhouse Hamburger(SCIENTIFIC AMERICAN February 2009)
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