日経サイエンス  2009年4月号

特集:進化する進化論

進化心理学の4つの落とし穴

心理学

D. J. ブラー(北イリノイ大学)

 「配偶者を選ぶのに男性は女性の若さを重視し,女性は男性の性格を重視する」「男性はパートナーの不貞行為を恐れるが,女性は“心の浮気”を恐れる」。一般向けに人間の本性を進化の原理にもとづいて説明する「ポップ進化心理学」によると,こうした傾向は石器時代に狩猟採集民だった人間の祖先が,環境に適応するために進化したメカニズムだという。

 

 人間の身体器官が自然選択によって進化したように,心も環境の変化や生存・繁殖の競争に適応して進化してきた——というのが進化心理学の考え方だ。だがかつてのヒトの心がどうだったのか,どのように変化したのかは,化石や遺伝子解析からは何もわからない。心理学の手法を用いて,現在の人間の行動や心理から過去を推測するしかない。だがたとえもっともらしい説明ができても,証拠が得られない限りそうした手法だけでは真実に近づけないのではないか,というのが著者の主張だ。

著者

David J. Buller

北イリノイ大学主幹研究教授・哲学教授。著書にAdapting Minds: Evolutionary Psychology and the Persistent Quest for Human Nature(MIT Press, 2005),編著書にFunction, Selection, and Design(SUNY Press, Series in Philosophy and Biology, 1999)がある。

原題名

Four Fallacies of Pop Evolutionary Psychology(SCIENTIFIC AMERICAN January 2009)

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