
今年はダーウィン生誕200周年,代表著書『種の起源』の出版150周年の記念すべき年だ。ダーウィンの進化論は相対性理論や量子論とともに,今や現代科学を支える大きな柱となっている。カリフォルニア大学アーバイン校の進化生物学者アラヤは言う。「ダーウィンは,超自然的な作用を持ち込まずとも人間の理性で説明できるような,規律に則ったシステムとして自然を見る目を生物学に持ち込んだ」。
医学部を中退し,かろうじて神学の学位を取得したダーウィンは,1831年,父の反対に耳を貸さず博物学者としてビーグル号に乗船した。後に彼自身が「初めて経験した本当の意味での精神の鍛錬,あるいは教育」と回想する5年にわたる世界一週の旅は,その後の人生に多大な影響を与えることになる。彼は旅の途中,見たもの,聞いたものを細かく記録に残した。これらは数多くの標本とともに“巨大なデータベース”として研究者にも提供された。
帰国後,ダーウィンは慎重かつ緻密に理論を組み立て始めた。彼は自伝で書いている。「私の頭は集めた膨大な数の事実から法則を作り出す一種の機械になったようだ」。そして1859年,20年間の研究成果を『種の起源』で発表した。複数の種が共通の祖先から分かれて別々の道筋をたどるとする「分岐進化」と,世代を経るにつれより有利な特徴が残っていくという「自然選択(自然淘汰)」だ。
ダーウィンの理論は科学者や宗教家からの厳しい批判にさらされながらも耐え続け,今日も科学者が挑み続けている数え切れないほど多くの研究テーマの出発点となっている。進化論そのものもメンデルの遺伝学と統合され,進化してきた。特に,近年の遺伝子科学の発展には目を見張るものがある。だが,現在の生物学者も,依然としてダーウィンが悩み続けた問題に挑んでいる。「種とはいったい何か?」
原題名
Darwin’s Living Legacy(SCIENTIFIC AMERICAN January 2009)
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