日経サイエンス  2009年2月号

ファーストライトから10年 「すばる」が明らかにした宇宙

林 正彦(国立天文台ハワイ観測所)

 常夏のハワイ島にそびえるマウナケア山(標高約4200m)。山頂部の夜間の平均気温は0℃,快晴の日が多いが,ときに雪景色になる(マウナケアはハワイ語で「白い山」を意味する)。ここに世界を代表する10を超える大型天体望遠鏡が集まっている。観光客が去り,夜のとばりがおりるころ,ドームの扉が次々開き,望遠鏡が姿を現す。国立天文台のすばる望遠鏡を収めた銀色の円筒ドームもゆっくりと開き,直径約8.2mの一枚鏡が星空と向き合う。

 

 すばるは1998年のクリスマスイブにファーストライト(最初の光を望遠鏡に入れること)を迎えた。以来10年,すばるは数多くの成果を上げた。人類が知る中で最古最遠の銀河,言い換えれば宇宙で最も早く誕生した銀河を発見し,銀河がどのような道筋をたどって今のような姿形や分布になったのかを明らかにした。宇宙最大級の爆発「ガンマ線バースト」の起源や,謎の存在「暗黒物質」の広域分布の解明にも貢献した。惑星が生まれつつある現場の観測にも成功した。すばるの10年を振り返るとともに,これからの10年を展望する。

 

 

 

再録:別冊175「宇宙大航海 日本の天文学と惑星探査の今」

再録:別冊日経サイエンス187 「宇宙をひらく望遠鏡」

著者

林 正彦(はやし・まさひこ)

国立天文台ハワイ観測所長。専門は星・惑星形成過程の観測的な研究。特に原始惑星系円盤の構造とその運動,形成過程などに関心がある。原始惑星系円盤から星へのガス降着に伴うジェットなどの質量放出現象の研究も主な研究テーマとしている。

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