2008年のノーベル賞は物理学賞と化学賞あわせて日本人4人の同時受賞となった。物理学賞はシカゴ大学名誉教授の南部陽一郎氏と高エネルギー加速器研究機構名誉教授の小林誠氏,京都大学名誉教授の益川敏英氏の3人で,素粒子の理論研究での受賞。1つの賞での日本人同時受賞は初めて。化学賞はウッズホール海洋生物学研究所・元上席研究員の下村脩氏で,緑色蛍光タンパク質の発見が評価され,2人の米国人研究者との共同受賞となった。4人の業績を詳しく紹介する。
湯川・朝永そして南部──。素粒子物理学の枠組みである「標準モデル」の構築に貢献した日本人といえば,必ずこの3人の名前があがる。標準モデルの柱の1つとなるゲージ理論では全素粒子は質量ゼロとされたが,それらに質量を与える基本的メカニズムが,南部氏が1960年に提唱した「対称性の自発的破れ」という概念だ。
その後10年で標準モデルの土台はできたが,難問だった「CP対称性の破れ」は1970年代に入っても説明できず,いったい何種類の素粒子が存在するのかもわからなかった。1973年,小林・益川両氏は標準モデルでCP対称性の破れを無理なく説明する「小林・益川理論」を提唱,同理論の帰結として,物質を構成する素粒子クォークが6種類で“フルセット”であることを予言した。予言はその後,約20年にわたる米欧での実験で検証された。
化学賞は「緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見と応用」に寄与した3人の研究者に贈られる。オワンクラゲからGFPを発見した下村脩・ウッズホール海洋生物学研究所元上席研究員,GFP遺伝子を異種細胞に導入する方法を開発したコロンビア大学教授のチャルフィー(Martin Chalfie),そしてGFPから多彩な蛍光タンパク質を作り出し,生命科学の研究に欠かせないツールを誕生させたカリフォルニア大学サンディエゴ校教授のチェン(Roger Tsien)の3氏。3氏の研究者の異なる視点と個性が半世紀近くをかけて結実させた研究だ。
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