日経サイエンス  2008年10月号

ルービックキューブを超えて 群論パズルを楽しむ

I. クリッツ(ミシガン大学) P. シーゲル(ペンシルベニア州立大学)

 何百万人という人々が幾度も頭を抱えた「ルービックキューブ」。1980年代に世界中を席巻し,私たちを虜にした魅惑的なパズルだ。ルービックキューブを知らない人や1980年代を知らない人のために簡単に説明しておこう。ルービックキューブとは27個の小さい立方体(キュービー)が全体のキューブの1辺に3個ずつ並ぶよう積み重なってできたプラスチック製の玩具だ。全体のキューブが持つ6つの正方形の各面は,はっきりした6色に塗り分けられている。典型的には,青,緑,橙,赤,黄,白だ。

 

 キュービーがただ積み重なっただけのように見えるが,その見せかけに惑わされてはならない。ルービックキューブに潜む独創的な仕組みは,1974年にハンガリー人の教師,ルービック(ErnÖ Rubik)が発明したものだ(これとは別に,日本人の石毛照敏(いしげ・てるとし)氏が特許を取得している)。

 

 ルービックキューブやルービック多面体,その他多くの類似品は,それらパズルのピース(ルービックキューブの場合はキュービー)を再配置,つまり置換する操作に基づいていて,「置換パズル」という名で知られている。こうした置換パズルは「置換群」と呼ばれる数学的構造と深くかかわっている。ところが,ルービックキューブをいったんマスターしてしまうと,ルービックキューブに類するほとんどの置換パズルが同じ攻略法によって解けることに気付き,その時点でこの種のパズルはスリルを失ってしまう。

 

 そこで,私たちはルービックキューブなどとは大きく異なる戦略が必要になる新しい3つのパズルを考案した。「散在型単純群」に基づいたパズルで,ルービックキューブでうまくいった方法がまったく通用しない手強いものだ。

 

 

→このパズルに挑戦したい方はこちらへ

著者

Igor Kriz / Paul Siegel

クリッツはミシガン大学アナーバー校の数学科の教授で,代数トポロジーと数理物理学を研究している。プラハのチャールズ大学で数学の博士号を取得。趣味はピアノとオルガンの演奏だ。シーゲルはミシガン大学の学部生のときに散在型単純群の研究を行い,現在ペンシルベニア州立大学で数学のPh. D. 取得を目指している。

原題名

Simple Groups at Play(SCIENTIFIC AMERICAN July 2008)

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