日経サイエンス  2008年9月号

短期集中連載:カミオカンデとスーパーカミオカンデ 物理学を変えた四半世紀

未知未踏に光で挑む

中島林彦(編集部) 協力:晝馬輝夫(浜松ホトニクス)

 奥飛騨の神岡鉱山(岐阜県飛騨市神岡町)にある東京大学宇宙線研究所の素粒子実験施設カミオカンデで超新星ニュートリノをとらえたのを機に,日本はこの四半世紀,ニュートリノ研究で世界をリードするようになった。

 

 カミオカンデの建設にあたっては,当時の常識を打ち破る直径20インチ(約50cm)もあるお化け電球のような超高感度光センサー(光電子増倍管)の実現が大前提だった。

 

 その増倍管を開発したのは,小柴氏の弟子,戸塚洋二氏が課したハードルを乗り越え,世界最高の技術を持つに至った浜松テレビ(現浜松ホトニクス)。

 

 同社の晝馬輝夫氏は,無理難題とも思えた小柴氏の要請に応え,驚くほどの短期間で巨大増倍管を作り上げた。それから約30年,宇宙空間から南極の深い氷の下まで,同社の光センサーは活躍の場を広げている。

協力:晝馬輝夫(ひるま・てるお)
浜松ホトニクス会長兼社長。堀内平八郎ら3人で1953年に創業,同社を社員数約2500人の研究開発型企業に育てる。開発した増倍管や半導体シリコン検出器は素粒子物理学や天文学のほか遺伝子研究,医療,石油探査,化学分析など非常に幅広い分野で使われている。1998年に東証一部に上場したのを機に,自身が持つ株式の一部を売却,産業界の支援も得て光産業創成大学院大学を設立し,理事長を務める。小柴昌俊氏の平成基礎科学財団の運営にもかかわる。

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