日経サイエンス  2008年8月号

系外惑星が語る惑星系の起源

D. N. C. リン(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)

 私たちが知っていた惑星系は,長らく太陽系だけだった。その成り立ちも,太陽系のように,ガスと塵の円盤から小さな粒子が次第に集まってできてきたものと考えられていた。そのため系外惑星も「地球のような星」や「木星のような星」があると思われていた。

 

 だが1995年に初めて発見された系外惑星は木星の半分ほどの質量をもち,中心の恒星のすぐそばをわずか4日ほどの周期で公転する「ホットジュピター」だった。まもなく極端な楕円軌道をもつ系外惑星「エキセントリックプラネット」も発見され,太陽系とはまったく違う惑星系の存在が明らかになり,こうした惑星系がどのようにできたのかが研究されるようになった。

 

 多くの惑星系では,まず原始惑星が形成され,衝突を繰り返して巨大ガス惑星に成長する。その過程で軌道も大きく変え,他の原始惑星候補をのみ込んだりはねとばしたりする。ガス惑星自体が中心の恒星に飲み込まれてしまれることも多い。惑星系の形成は,従来考えられていたよりはるかに複雑でダイナミックな現象のようだ。

著者

Douglas N. C. Lin

同世代の多くの科学者と同じく,彼の天文学への興味をかき立てたのは1957年のスプートニク衛星の打ち上げだった。ニューヨークで生まれ,北京で成長し,その後,モントリオールのマギル大学に通い,ケンブリッジ大学からPh.D.を受けた。さらに,ケンブリッジ大学とハーバード大学でポスドクとなり,カリフォルニア大学サンタクルーズ校で教授陣に加わった。また北京大学の天文学・天体物理学カブリ研究所を設立した当時の所長だった。スキーを愛する惑星形成理論家として,氷粒子と雪境界線については実体験に基づく知識も豊富だ。

原題名

The Genesis of Planets(SCIENTIFIC AMERICAN May 2008)

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